終活の一環として注目されている「生前整理」。耳にしたことはあっても、具体的に何をするかは分かりにくいかもしれません。今回は、終活における生前整理ですべきこと、そして注意点についてご紹介します。
生前整理とは、自分の死後のことを考えて、生きているうちに身の回りの全ての持ちものを必要なものと不要なものに整理する作業です。その中には土地や預貯金などの財産やスマートフォン内にあるデータのようなデジタル遺品なども含まれており、「人生における断捨離」と言い表すこともできます。
整理を始めると改めて所有物の多さに戸惑い、容易な作業ではないと気づく方が多いようです。中には、1~2年という長期に渡って行う方もいらっしゃいます。しかし、年齢を重ねると重い荷物の搬出が困難になったり、手続きのための外出ができなくなったりするというように想定外の事態が起こる可能性も考慮しておかなければなりません。そのため、できるだけ早い時期から取り掛かるほうが望ましいでしょう。
もし生前整理を行わず亡くなった場合、残された家族が負担を担うことになります。金融資産や不動産などの財産を明確に整理しておかなければ、手続きに不備が生じたり、家族間のトラブルに発展したりする可能性があります。それは品物に対しても同様で、家族が処分の判断に苦慮するケースは遺品整理の現場で実際によく起こります。生前整理とは、自分が後世に残したい、引き継いでもらいたいと考えている思いや品物を把握しやすくなり、家族に対してもその重要性を認識させることができる行為です。
残された家族の負担を軽減するためにも、生前整理は非常に大切なのです。
生前整理を行うのに最適なタイミングはあるのでしょうか。
生前整理には始めるタイミングや決まりといったルールはありません。しかし、どうしても時間と労力がかかる作業になるため、
体力のある元気なうちから少しずつ進めておくと良いでしょう。
また、会社の定年退職やお子様の自立を機に、自分の時間が自由に作れるようになったタイミングで始める方も大勢いらっしゃいます。
生前整理を効率的に進めるために、まず財産目録を作成しましょう。
財産状況を明確に書き記しておけば必要な書類などを処分する危険が回避でき、残される遺族が財産を調査する手間を省くことができます。
財産目録に書き記す内容
・土地や建物、宝石や骨董品などの資産価値があるもの
・預貯金、現金
・年金手帳や健康保険証
・保険証書
・有価証券
・負債
スムーズに作業を進めるためにも、残したいものをリストアップしておきましょう。第三者に手伝ってもらう場合も誤って処分される可能性は軽減しますし、自分にとって本当に必要なものを知ることで充実した余生を過ごすための足場を築くことができます。また、自分には必要がなくても家族が大事にしているものもあるため、自分だけで判断がつかないものは事前に家族に聞いておくのがベストです。
生前整理を行う上で重要なポイントは、取捨選択の基準を定めることです。作業時には思い出が蘇り手が止まることもあるでしょうが、必要かどうかの判断に迷う場合は思い切って処分しなければ所有物を減らすことはできません。しかし、生前整理は一般的な断捨離とは異なり遺産相続に関わる重要な作業です。相続人のことも考えて行う必要がありますので、予め念頭に置いて進めるようにしてください。
遺族の悩みで最も多いのが、銀行の口座情報や銀行印の保管場所、そしてインターネットで利用しているサイトのIDやパスワードなどがわからないことです。最近はスマートフォンやパソコンを使用している高齢者も多く、そのような機器の中に保存されている写真やメールといったデジタル遺品の整理も必要不可欠となりました。
家族に見られたくないデータは消去し、残しておきたい写真などのデータはDVDに焼いておくようにしましょう。また、有料サイトや会員サイトを利用している場合はIDやパスワードがなければ解約できないこともあるため、それらの個人情報も遺族にはしっかり「遺す」ことも重要です。
デジタル遺品についてもっと詳しく知りたいという方は、コチラをご覧ください。
家族間で相続トラブルが起きないためにも遺言状やエンディングノートの作成は必要不可欠です。
エンディングノートには葬儀や遺品の取り扱いに関する希望、訃報の連絡をしてほしい人など、自分の思いを家族に書き残すことができます。
ただし、遺言状のように遺産の分配方法を書き記しても法的効力がないため、希望は認められない可能性があります。
生前整理は計画性を持って進めなければ将来的に大きなトラブルを引き起こす可能性があります。
長年ため込んだものを整理するため第三者に手伝ってもらうこともあるかもしれませんが、先述したように必要なものと不要なものを予め整理しておかなければ、重要な書類や必要な品物を誤って処分してしまう恐れがあります。生前整理で最も注意すべきなのは、価値あるものや形見分けするものを捨ててしまわないようにすることです。
亡くなった後で「どう扱えばいいのか分からない」と遺族が遺品整理で困らないように、大事な書類や財産などの情報はできるだけわかりやすくまとめて残しておく必要があります。自分の死後に残された遺品で家族に負担をかけないようにすることが生前整理です。そのためにも財産目録を作成し、遺言状やエンディングノートで家族に思いを伝えることはとても有効な手段ですし、家族と一緒に整理をするのも良い方法かと思います。
また、スマートフォンやパソコンなどの個人情報が入っている機器類はできれば生前に処分すべきですが、必要性があれば当然手元に残すことになります。しかし、知られたくないデータも残っているかもしれませんので、亡くなった後の処分方法についてもしっかりと明記することが大切です。
終活という言葉が定着し、断捨離を始める方は増えていますが、それを意味あるものにするためにも計画性を持って少しずつ進めていきましょう。
生前整理を始めてみても、どうしてもうまく進まないことがあります。
そのような場合は協力を仰ぎましょう。
一人で整理を進めていても荷物の搬出や煩雑な手続きがあり、順調に進まないこともあります。もし可能ならば、家族に協力をお願いしましょう。
家族に協力を依頼する場合は、スケジュールや残す遺品の基準などをしっかりと定めておかなければうまく進まないこともあるため、事前にしっかりと打ち合わせをしておく必要があります。
最近は、生前整理や遺品整理を代行してくれる業者も存在しています。生前整理・遺品整理に関する知識を持つ有資格者が在籍しているところもあり、整理すべき作業について的確なアドバイスとサポートをしてくれます。法的な知識がなければ難しい相続に関する手続きなども滞りなく進むため、充実した整理ができます。不安を残さずに整理できるという安心感があり、利用する人が増えています。
また、依頼した場合の費用は、部屋の間取りや状況、整理する内容などによって大きく変わるため、実際に現地を見て相談に乗ってもらいながら見積もりを作成してもらいましょう。不用品の買取に対応している業者も多いので、費用を抑えながら整理できます。
最後に生前整理と終活、遺品整理の違いを簡単にまとめておきます。
終活とは、人生の終焉に向けて人生設計をする活動です。
生前整理も終活と同様に自分の人生の終わりに向けて行うものですが、身の回りの整理をしていくことでこれまでの人生を振り返り、前向きな気持ちでそれからの生活を送れるようにするといった意味が含まれます。また、生前整理をすることで過去や思い出を振り返り人生を見直すこともできます。
遺品整理は、故人が残した品々を遺族が整理・処分することです。
生前整理とは異なり、本人ではなく遺族が整理を行うため遺品の区分けが難しく、ともすれば、負担が大きくかかる作業になるかもしれません。その反面、遺品整理を通して故人との思い出に浸りながら心を整理する貴重な時間を過ごすことができます。
また、生前整理では始めるタイミングは個人の判断に委ねられますが、遺品整理の場合は四十九日後から取り掛かることが一般的です。
生前整理を行うことで遺族の負担を軽減できるだけでなく、これからの生活をより前向きな良いものにすることができます。遺族に残したいもの、つまり自分が本当に大切にしているものを改めて認識できる作業でもあるため、計画性を持って始めることが重要です。生前整理は終活の一環であり、膨大なものを整理するには時間と労力が欠かせません。できるだけ余裕を持って、元気なうちから少しずつ始めるように心掛けておきましょう。