写真は故人との大切な思い出を記録したものです。遺品整理時に故人が写っている写真は大切に保管しておきたいですが、写真の量が多いと保管場所が必要になるため、選別することになるのが大半です。また、故人の思い出の詰まった写真は捨てづらく、どれを保管すれば良いか悩んでしまう方もいらっしゃるのではないでしょうか。今回は写真、アルバムを上手に整理する方法についてご説明いたします。
まずは室内に保管された写真を一つの場所に集め、整理しなければいけない写真がどれくらいあるのかを把握しましょう。遺品整理を始める前に予め写真・アルバム専用の箱を用意しておくとスムーズです。
アルバムは直射日光で写真が劣化するのを防ぐために本棚や押し入れなどに保管されていることが多いです。 ただし、人によってはアルバムではなく写真屋から受け取った袋に入れたまま保管していたり、箱の中に収納していたりと保管場所はまちまちです。タンスの中や机の引き出し、雑誌のページの合間などに挟まれていることもあります。古い写真は劣化し破損しやすくなっている可能性がありますので、慎重に取り扱いましょう。
探し出すのに少々手間がかかりますので、写真やアルバムの捜索や整理は他の遺品の仕分けが済んだ後に本格的に始めるのが良いでしょう。
また、写真はアルバムだけでなく、データやフィルムとして保管されている場合もあります。
故人が使用していたパソコン・スマートフォン内にも写真のデータが残っている可能性があります。これらはデジタル遺品と呼ばれ、もし貴重な写真があれば別の記録媒体に移すか、現像して紙の写真と一緒に保存することをおすすめします。写真を投稿できるSNSにも故人の写真が残っていることもありますので、良く撮れている写真は保存しても良いでしょう。 しかし、故人の端末にはプライベートな情報が保存されていることがほとんどです。生前に故人よりデジタル遺品を整理しないでほしいと伝えられていた場合は、データに手を加えずそのまま端末を廃棄しましょう。遺品整理では故人の意思を尊重することが大切です。
ビデオテープやフィルムはそのまま放置しているとカビが発生したり、加水分解によって再生や現像ができなくなってしまいます。再生機器を持っていなかったり、現像済みか分からない場合は写真屋さんに依頼し、ビデオテープやフィルムをデジタルデータ化してもらいましょう。
写真を集め終わり、量を把握できたら仕分けを行います。
故人が移っている写真全てを残しておこうとすると、写真を整理する意味がなくなってしまいます。写りが悪い写真や劣化した写真に加え、撮り直しできるような風景写真、嫌な思い出を蘇らせる写真などは割り切って処分するのがおすすめです。
故人が写っている写真はもう二度と撮影することはできないためなかなか手放しにくいとは思いますが、以下の基準に沿って写真を仕分けると捨てる写真を選びやすくなります。
お世話になっている親族が移っている写真を優先して残しておけば、親族間で集まった機会に思い出を振り返ることができます。反対に付き合いがない親族の写真は思い切って処分してしまいましょう。
成人式・結婚式など人生の節目を表す重大イベントの写真は残しておくのがおすすめです。故人が幸せそうにしている姿を写した写真は後から見返しても心が温まるはずです。
風景やアングルが似通っている写真は1枚残っていれば十分です。写りが良い1枚を厳選して、残りを処分することで写真の量を大きく減らすことができます。
写真の整理作業で一番大切なことは、焦らないことです。冷蔵庫に残された食品など、放置していると腐敗する恐れがあるものは速やかに処分をしなければいけませんが、写真の整理は急ぐ必要がありません。そのため、他の作業や気持ちが落ち着いてからじっくり取り掛かるのがおすすめです。写真の整理にまだ手をつけられそうにない場合は一旦段ボールなどに収納しておき、後から仕分けに着手するという方法も検討してみましょう。
写真の仕分けが完了したら、次は保存、処分する方法を考えましょう。まずは保存方法からご紹介します。
古いアルバムにそのまま貼っておいても問題ありませんが、仕分けの結果アルバムが隙間だらけになってしまった場合は新しいアルバムに写真を貼り直してみましょう。思い出の写真をじっくりと眺めて過去を振り返ることができるだけでなく、大切な人を亡くした直後の気持ちを整理することにつながります。 アルバムは湿気がこもらず、風通しが良い場所で保管しましょう。湿気はカビの発生や変形の原因につながります。
残しておきたい写真が多い場合はクラウドサービスを利用して、データとして保存するのもおすすめです。この方法なら劣化することもありませんし、場所も取りません。データ化する方法にはスキャナーを使って取り込む方法や、料金を支払って写真屋さんや専門業者に依頼してDVDやCD-ROMに記録してもらう方法があります。また、最近はスマホのスキャンアプリも性能が高くなっているのでおすすめです。まるでスキャナーで取り込んだかのような写真のデータを作成できますので、枚数が少ない場合は試してみましょう。
データ化した写真はデジタルフォトフレームという機械で飾る方法がおすすめです。 データの入ったメモリーカードをデジタルフォトフレーム本体に挿すだけで、液晶画面に通常の写真立てのように写真データを映してくれます。 端末を立ち上げたりアルバムを取り出したりする手間をかけずに、いつでも大切な人の写真を眺めることができます。クラウドサービスであれば、遠方の親戚や生前故人と親しくしていた方にもURLを送るだけで簡単に写真を共有し、故人を懐かしむことができます。
写真の中に故人と親しい友人や親族が写っていた場合はその人に形見として渡すのも良いでしょう。 しかし、関係の浅い人や生前に不仲だった人にまで強引に写真を渡すと相手を困らせてしまいます。むやみに押しつけず、相手に迷惑がかからないか確認してから渡すようにしてください。
思い出がこもった写真を処分する場合は、故人や写っている人の思いを踏みにじることがないように最後まできちんと処理することが大切です。
そして写真にはプライバシーが含まれるため、故人がはっきりと写っている写真は処分方法にも気を付けましょう。
写真を処分する際にはプライバシー保護のために紙に包むなどして見えないように処分すると安全です。さらに徹底するなら破ったりシュレッダーにかける方法もありますが、故人の写真に刃を入れることに抵抗がある場合には漂白剤を溶かしたお湯に一晩ほど浸しておけば漂白されて白一色に変色します。
写真・アルバムを処分する際には自治体の規則に従ってきちんと分別する必要があります。写真は可燃ゴミに分類されるためそのまま燃えるゴミに出すことができますが、アルバムにはコイルやビスなど金属部品・フィルムのプラスチック部分・紙部分が使用されており細かく分別しなければならないため、事前に分解作業が必要になります。
ただし自治体によってはまとめて家庭ゴミとして回収してくれる場合もあるため、お住まいの自治体の分別ルールに従うようにしてください。
遺品整理業者に作業をお願いしている場合はアルバムごと回収を依頼するのも手です。この場合は分別作業も必要ないため、処分に時間をかけずに済みます。アルバムの冊数が多い場合におすすめの方法です。
*ご自身の土地だったとしても、庭や空地で写真を燃やすのは火災などのトラブルの危険がありますので、絶対にやめましょう。
故人が写った写真をゴミとして捨てることにどうしても抵抗を感じてしまう場合は、以下の方法を試してみてください。
お焚き上げとは物品に宿る魂や思いを炎で浄化する供養方法のことです。お焚き上げによる供養を行いたい場合は、いきなり寺院や神社へ持ち込まず、事前にお住まいの地域の寺院や神社で受け付けてもらえないか問い合わせてみましょう。遺品整理業者の中には、お焚き上げをオプションとして手配してくれる場合もあります。また、最近はオンラインで完結するお焚き上げ代行業者もあります。申し込んだ後、業者からレターパックなどのキットが届き、そこに写真を入れて返送するだけでお焚き上げを任せられるという流れになります。
お焚き上げを行う時期、申し込む場所について詳しく知りたい場合は下記のコラムを参考にしてみてください。
『遺品を捨てられない!踏ん切りをつけて次へ進むための方法とは?』
写真に写る故人の姿を見るとどうしても罪悪感を感じてしまいます。白い紙や布で包み、見えなくして処分すれば通常の書類のように処分できます。捨てるときは感謝の気持ちを伝え、お清めの塩を撒くことでより安心して手放せるでしょう。
写真は可燃ゴミとして処分することができるため、捨てるだけならそれほどの労力は要しません。こちらでやるべき作業はプライバシー保護のために何が写っているか見えないようにすることと仕分け作業だけです。
しかし、故人が写っている写真は思い出が詰まった貴重な遺品です。写真の仕分け作業は故人との大切な思い出と対面し、ご自身の気持ちを整理する貴重な時間であるため、適当に処分してしまうことは非常にもったいないです。悔いが残らないよう、ご自身が納得できるまで腰を据えて整理されることをおすすめします。