終活という言葉が多く聞かれるようになった現代、40代のうちに準備するほうがいいといわれていますが、具体的に何をすればいいのかいまひとつ分からないうえ、必要性も感じられないという方も多いかと思います。
しかし、終活に早すぎることはありません。むしろ自分自身のことを冷静に判断できる40代だからこそ、早めの着手が大切といえます。
そんな40代の方のために終活でやるべきことについて、さらにパートナーがいる人といない人で違う点も併せて解説していきたいと思います。
終活というのは、人生の終わりを迎えるその時に後悔しないよう生きるための準備のことです。具体的に言えば、葬儀の方法やお墓の準備、遺言書の作成や身辺整理を指します。そのような言葉が並ぶとどうしてもネガティブに考えてしまいがちですが、終活は、過去を一度振り返って整理し、未来を明るく照らすためのものでもあります。将来を前向きにとらえる行為ということです。一度、人生を振り返り改めて未来を見据えることで、いつかやりたいと思っていたことや、将来のために今始めるべきことが明確になり、これからの人生をより有意義に過ごすためのきっかけになるのです。40代といえば、まだまだ働き盛りの世代。終活を自分事として考えるには早いと思うかもしれませんが、実は40代から始めるにはメリットも多いのです。
40代から終活を行うことで、早くから老後に備えて準備ができ老後の不安が少なくなります。また、以下のような老後の様々な選択や決断に備えることができます。
・いざというときは誰に頼るのか
・施設に入りたいのか
・施設に入るとしたら費用はどれくらい用意しておく必要があるのか
・病気や怪我をしたときの保険などの手続きは
・認知症になってしまった場合はどうするのか
これらをそのときになって考えても、判断力が低下していたり、経済的な理由などで選択肢がなくなってしまっている可能性もあります。判断力がしっかりしている40代のうちにある程度決めておくことで、老後の不安はかなり軽減されます。また、家族や友人に相談しながら前もって決めておくことで、協力体制を盤石にしたり、逆にこちらが誰かの”いざという時”をサポートしてあげることもできるようになります。
平均寿命が長い日本においても、人は事故や病気で早くに亡くなってしまうことがあります。40代という早いうちから終活を始めることで、ずっとやろうと思っていて後回しにしてきたことや、夢半ばで諦めていたことなどを改めて始めるきっかけにもなります。また、子供の自立や親の介護、自身の結婚・離婚などの節目の際に都度見直しを行い、自分にとっての優先順位や大切なものを再認識し、人生設計の軌道修正をすることができます。
身辺整理や断捨離を行うには体力・気力・判断力が必要になります。粗大ゴミを運んだり、必要なものと不用なものを仕分けたりする作業は老後に行うとなると大変ですが、40代であればまだまだ体力の衰えも少なく、スムーズに行うことができるでしょう。
それでは、次の章から40代の終活で取り組むべき事柄について具体的に見ていきましょう。
エンディングノートとは自分の人生の終え方と、老後やいざというときに必要となる情報をまとめて記しておくためのものです。法的効力はありませんが、書いておくともしものときに残された家族を助けてくれるでしょう。エンディングノート専用のノートも市販されていますが、作成に関して決まった形式はないので、普通のノートや手紙に加え、パソコンを用いてデジタル方式で書いても大丈夫です。エンディングノートに書くのは下記のような内容です。
・不動産など財産の情報と希望する処理方法
・預金銀行やクレジットカードの情報
・保険、ローンなどの情報とID・パスワード
・PCやスマートフォンの情報や保存データ
・SNS・ブログのアカウント情報やパスワードと処理の希望(解約・削除など)
・葬儀やお墓に関する希望
・死後連絡してほしい親族や友人の連絡先
・自分の人生の振り返りや、残していく人へのメッセージ
エンディングノートは自分の人生の振り返りと、大切な人に伝えたいことを書いていくノートですので、書くべき項目がとても多く感じてしまいます。
そのため一度で全てを書ききれないと、筆が進まないという方も多いかもしれません。そのため、まずは書けるところから順番に書いていくことをおすすめします。 自分史として人生の振り返りを書いておくと、今後の人生設計を見直して、さらなる意欲が湧く良いきっかけにもなりますし、病気になったときに読むと楽しかった記憶が蘇り、元気をもらえることもあるようです。
また、身近な人や友人・知人に普段言えない思いを書くことで、改めて自分の本当の気持ちに気が付くこともあります。気持ちを整理するとても良い機会です。受け取った家族の顔を思い浮かべて書けば書きやすくなるのではないでしょうか。
エンディングノートを書く際に気を付けていただきたい注意点が二つあります。
金融機関の口座番号やパスワードなどの重要な情報を記載している場合、紛失や盗難には十分に注意しましょう。預貯金に関する情報を記載している場合は、不正に引き出されたりする被害に遭う危険性があります。鍵付きの引き出しやケースに保管するなどの対策をしておきましょう。
せっかくエンディングノートを用意していても、遺族がその存在を知らず、見つけてもらえなければ意味がありません。家族だけの共有スペースに置くなど、必ず保管場所を伝えておきましょう。加えて、デジタル方式で作成した場合には、保存した端末のパスワードが分からず発見されないことも想定し、プリントアウトして現物として残すのも大切です。
エンディングノートは一度書いたら終わりではありません。自身を取り巻く環境や人間関係、自分の価値観や優先順位は変わっていくものなので定期的に見直し、書き足したり、内容を変えたりと更新していくのが望ましいです。例えば、毎年自分の誕生日や元日などの節目に見返してみるのがおすすめです。
断捨離は比較的体力のある40代に行っておくことで、今後どのような暮らしをしていくか、改めて将来的な計画を立てることができますし、自分の死後には遺族が遺品整理をする際の負担を軽減することもできます。
また、部屋がすっきりと片付くなど快適な住空間を手に入れるチャンスでもあります。
必要なものと不要なものを分け、不用品を処分しましょう。リサイクルや人に譲るのも良いかもしれません。少しでも迷ったら思い切って捨てることも不用品を減らすためのコツです。できるだけ不要な物をなくして今のうちに、最低限の持ち物での生活に慣れておくことが大切です。将来の快適な暮らしのためにまずはできることから始めてみましょう。そして、気を付けていても不用品は溜まってくるものと受け入れて、衣替えや大掃除の際などに断捨離を繰り返し行うようにしましょう。
しかし「断捨離=物を減らすこと」ではありませんので、一瞬でも判断に迷うものや、大切な思い出の宿るものは保留にしたり、捨てずにとっておきましょう。
特に再発行できない書類や非売品のグッズ、骨董品などは注意深く整理してください。
断捨離中は必要なものまで不要に見えてくることもあります。その状態に陥ると、必要か不要か判断に迷うものを勢いで捨ててしまい、取り返しのつかない事態を招くことも十分に起こりえます。
使ってない銀行口座やクレジットカードを解約し、投資信託などの資産はまとめておくようにしましょう。また、投資している不動産や貸し借りしている金銭、ローンなどの負債の有無、資産価値のある骨董品や貴金属の有無も併せて確認しておきましょう。
デジタル遺品という言葉があるように、パソコンやスマートフォンなどのデジタル機器やインターネット上に残したデータも整理する必要があります。
LINEやフェイスブックなどのSNSや、インターネットショッピングのアカウントなどは、本人以外には扱えないことが多いため、整理し、まとめておくことが大事です。
家族に残しておきたい写真や動画はDVD・クラウドストレージにまとめておき、家族にその存在を伝えましょう。家族に知られたくない異性関係や金銭面・対人関係でのトラブルの記録などは削除しておくことをおすすめします。データ整理の際に一緒に遺影用の写真も自分で選んでおくと遺族の負担を軽減できます。さらに、登録しているアプリなどの解約方法も忘れずにまとめておきましょう。
自分の終活を機に、終活世代の両親と一緒に話し合ってみてはいかがでしょうか。中にはそのような話は縁起が悪いと、話題にあげることができない人がいるかもしれません。しかし前述しているように、終活は死後のためだけでなく、今の私たちが今後より良い生活を送るために行うものでもあります。まずは今までの人生の振り返りを一緒に話してみると良いかもしれません。それをきっかけに終活を進めてみてください。
ご自身が40代で両親が70代、80代という世代の場合、自分よりも両親のことのほうが気にかかる年代だと思います。両親と一緒にエンディングノートを書くことで、より自分のことも想像しやすくなり、将来を考えるきっかけにもなります。一緒に話をしながら書き綴るので互いの内容も理解できますし、普段では触れにくかったこともエンディングノートがきっかけで聞きやすくなるでしょう。
先に聞いておきたいのは、お葬式やお墓をどうするかだと思います。できるだけ本人の希望を叶えてあげたい事柄ですから、話ができるときに確認しておきましょう。ただし、藪から棒にセンシティブな話を切り出すと驚きから話がこじれたり、ケンカの原因になったりすることもあるため、できるだけ両親の気持ちを察しながら話を進めるのを忘れないようにしてください。話を切り出すための例として、ご自身が生前整理を進めるうえで得た経験や気付いた事柄について話をすると共感してもらいやすくなります。
お葬式は少数で家族葬を行うのか、友人や知人にも見送ってもらうために一般的なお葬式にするのか、形態をどうしたいかなどを話し合いましょう。誰を呼び、誰に連絡をするべきなのか、また、相談に乗ってくれそうな人も併せて聞いておくと安心できます。
お墓は今あるお墓を使うのか、墓じまいを検討するのか、それによってお墓にかかる資金についても考えることができます。また、お墓の管理方法は生活拠点を考える上でも非常に重要な意味を持つため、管理者についても早めに話し合っておくことが大切です。
実家に住み続けるのか売却するのかを決めておくことで、今後のライフプランと資金計画を同時に考えることができます。まずは家族でよく話し合うことが大切です。
終活を行う際は、何らかの理由で”おひとりさま”になった場合も考える必要があります。特に40代からは病気・両親の他界など様々なリスクを想定しておくに越したことはありません。
まずは、人間関係を今一度見直してみましょう。頼れる人がいるといないとではやるべきことが変わります。頼れる人がいる場合は、その人にきちんと相談しておくと良いでしょう。もしも頼れる人がいなければ、下記のような生前契約を検討してみてください。
・死後事務委任業務:本人の死亡後、葬儀などの事務処理を行ってくれる
・生前事務委任業務:生活のサポートや入院や施設などの入居の際に、身元保証人になってくれる
・任意後見業務:認知症などにより判断能力が劣ってきた場合に、あらかじめ契約した範囲で本人に代わり法律行為を行ってくれる
どのようなサービスがあるのかを今のうちに調べておき、万が一の場合に備えて準備しておくことが大事です。また、自分の死後に不要になった家財の処分方法や遺品の譲渡、ペットの引き取り手なども同様に考えておかなければなりません。
突然の病気や事故で介護などが必要になった場合や、認知症などで判断能力が欠如した場合も考慮する必要があります。そのようなときは、身元を保証してくれる第三者やサービスの利用を検討しましょう。入院や介護施設の利用には、身元保証人が必要な場合がほとんどです。いざ必要になった時に困らないよう、利用できるサービスを調べ、備えておくのは大切なことです。また同時に、医療保険や生命保険の見直しをすることも大切です。
資産の見直しは定期的に行いましょう。まずは老後にいくらお金が必要になるのかを計算してみてください。そして自分が何歳頃まで働けるのか、どのくらい収入が得られるのかなども計算し、おおよその金額を把握しておきましょう。そのうえで、預貯金だけでなく、所有する不動産や株式、信託などの投資、家財道具や貴金属などの売却可能なものなども全て書き出してどれほどの資産になるか明らかにしておきましょう。資産が明確になれば、今後のために貯蓄・資産形成のプランも立てることができます。
また、遺言書の作成をしておくことをおすすめします。遺言内容を実現する遺言執行者までしっかりと決めておくとスムーズに進むでしょう。
生活支援や介護施設の制度を調べたり、地域支援サービスを事前に確認しましょう。老後はどうしても収入が減るので、特にお金に関するセーフティネットについて確認しておくと安心です。生活支援などのサービスは気づきにくいものですので、定期的にインターネットやパンフレットで調べるようにして情報のアップデートは欠かさないようにしましょう。
また、近所の人とコミュニケーションを図り、万が一に備えて役所の福祉課などに一人暮らしであることを伝えておきましょう。 また、整理作業をきっかけに近所付き合いを見直してみるのもおすすめします。あいさつ程度であっても立派な近所付き合いです。
40代での終活は、親や子供のための終活だけでなく、自分のためでもあります。まずは前向きに気持ちを切り替えて、できることから始めてみてはいかがでしょうか。また、独身だからこその終活の必要性もお分かりいただけたと思います。何事も準備をしっかりとしておくに越したことはありません。
当コラムで皆様の疑問が少しでも解消され、終活に興味を持っていただけたら幸いです。
今回はメリット・意義にフォーカスしましたが、より詳しい作業の進行方法を知りたい場合は、以下の記事を参考にしてください。