大切な家族が亡くなった場合、適切かつ冷静な行動をとるのが難しいこともあるかと存じます。
その時になって後悔しないよう、四十九日までに行う作業は流れとして覚えておくことをおすすめします。
身内の方が亡くなられた際に一番にすべきことは死亡診断書を記入・発行してもらうことです。こちらはこれから行うさまざまな手続きの際に要求される資料であることを覚えておいてください。
発行してもらう場所は故人が亡くなった場所によって変わります。
主治医や臨終に立ち会った医師が作成してくれます。
故人が生前に病気にかかり、通院していた場合は診察にあたっていたかかりつけ医に作成を依頼します。医師による診察の後に本日中には死亡診断書を発行してもらえます。
ただし、突然死や死亡時の状況に何らかの異常がみられる場合など持病・老衰以外で死亡した場合には犯罪の疑いがないかどうか検視が必要なため24時間以内に警察に連絡する必要があり、この際に発行される資料は死亡診断書ではなく”死体検案書”と呼ばれます。
死亡診断書と死体検案書に名称以外の違いはほぼありません。強いて言えば死因の解明が必要な分診察が念入りとなり発行に時間がかかるという点と発行にかかる料金が違う(司法解剖を含む可能性があるため死体検案書の発行料金は高くなりやすい)くらいです。
このように、状況を判断して連絡する機関を選ぶ必要があります。
先ほど紹介した死亡診断書と死体検案書は死亡届とセットになっています。(用紙左半分が死亡届、右半分が死亡診断書となっている場合が多い)
死亡届側に故人が亡くなった場所・本人の本籍地・届出人の居住地などの必要事項を記入、捺印のうえで故人の死亡地または本籍地の市区町村役場に提出します。
この作業には2点注意点があり、死亡を知った日を含めて7日以内(例:8月1日に死亡確認した場合8月7日が提出期限)に提出する必要がある点と、死亡届自体は今後の手続きで必要となることも多いので原本をそのまま提出せず、何枚かコピーを取っておく必要があることを覚えておいてください。(発行してもらった機関に依頼すれば有料で再発行はしてもらえます)
この死亡届が役所に受理されると「埋火葬許可証」を受け取れます。これは火葬場での火葬を許可する書類であり、火葬のためには必ず必要になります。
病院で亡くなった場合は長くとも半日までしか遺体を安置できないため、遺体の安置場所を速やかに決める必要があります。自宅もしくは依頼する葬儀社の安置室を利用するのが一般的です。
遺体の安置場所が決まり、搬送の手続きが終われば家族・親戚へ訃報を連絡します。この時点で通夜・葬儀の段取りが決まっていない場合でも問題ありません。亡くなったことの知らせと詳細は後日連絡することを伝え、後日改めて会場・日程を連絡するようにします。連絡の優先順位は家族・親戚を最優先、次に故人が務めていた会社や自治体の順です。
これまでの作業と並行して葬儀の手続きを依頼する葬儀社も決めておく必要があります。早めに決断することができれば作業のアドバイスを求められるうえに、死亡届の提出・手続きの代行等も依頼できるので進行がスムーズになります。
選ぶ基準は「誠実に対応してくれるか?」「料金プランは適切か?」「宗派や希望に合わせてこちらの希望通りの式を行ってくれるか?」など多くのポイントがありますが、大切な方を亡くして不安定な心境の中で冷静かつ的確な判断で葬儀社を選ぶのは難しいため、故人が亡くなる前にある程度の目星をつけておくことも大切です。
また、ここまでの作業と葬儀社選びは同時進行で進めていくことが望ましいです。
葬儀社が決まったら通夜・葬儀日程・葬儀の形式・喪主や受付などの役割分担を相談して決めます。近年では「一般葬」や「家族葬」に加え、通夜無しで告別式と火葬のみを行う「一日葬」や火葬のみを行う「直葬」など親族の都合や故人の願いに合わせた様々な形の葬儀方式がありますので、ご自身の考えや希望は余さず相談することをおすすめします。
僧侶の読経と慰問客の焼香を行った後、慰問客に通夜ぶるまいを行います。その後には線香の火を絶やさずに故人の遺体を一晩見守る「寝ずの番」という儀式を行うのが慣習でしたが、近年では法律の関係上遺体の番は2~3時間程度で切り上げる「半通夜」が主流となってきています。葬儀社が会場の準備やお膳立てをしてくれる場合も多いですが宗派や地域の慣習によって方式は異なるため、きちんと話し合っておくようにしましょう。
葬儀社が相談した通りに式を進めてくれますので、打ち合わせ時に決めた役割通りに仕事を行いながら故人と最後のお別れを行います。
お葬式が終われば火葬場に向かい、読経と焼香の後に火葬となります。その後、親族一同で「骨上げ」を行い、お葬式は終了です。
仏教では故人が無事に成仏することを願い、冥福を祈る儀式を法要と呼びます。法要を行う日は宗「初七日」「四十九日」「一周忌」と決まっており(宗派によって異なる)四十九日を持って故人の魂が浄土に旅立つとされています。「初七日」は名の通り亡くなってから七日を指す言葉ですが、現在では葬儀の後に続けて行う式中初七日という方式も増えてきているうえに、初七日から四十九日までの法要は遺族のみで行うことが通例なため、四十九日は僧侶を招き、親族・知人も列席する最初の大きな法要と言えます。
故人の魂が旅立ち、遺族は通常の生活に戻ることから、四十九日は「忌明け法要」とも呼ばれます。
1章で見てもらった通り、四十九日までに行うべきことは多いです。また、それらの合間を縫って各機関への手続きも必要となり、これらは最短で故人が亡くなったことを確認してから5日~14日以内に行う必要がある場合も多いため何をいつまでに行っておく必要があるかは正確に把握しておく必要があります。
そこで今章ではお葬式の準備と並行して行うべき、急ぎで対応が必要な手続きについてご紹介します。
年金事務所または市区町村の国民年金課窓口へ14日以内に届け出ます。この際、未払いの年金がある場合は同時に給付請求を行います。ただし、上記の日付は国民年金の場合であり、厚生年金の場合は10日とさらに短くなることには注意が必要です。
市町村役場にて介護保険の資格喪失届を提出します。この手続きも死亡確認から14日以内が期限です。
住民票抹消届と住民票世帯主変更届(故人が世帯主だった場合)を市区町村の戸籍・住民登録窓口にて行います。これらも14日以内に行う必要があります。
葬儀後当日から1週間~10日以内に請求されます。現金・振込が主流ですが、近年ではクレジットカードの使用や葬儀ローンが使える葬儀社も増えてきています。
・健康保険証の返却
・シルバーパスの返却
・運転免許証の返却
・銀行口座の凍結
上記は期限こそ決められていませんが、できる限り速やかに行うことが望ましいです。
大まかに以下の3工程で遺品整理は行われます。
故人様が残した持ち物のことを”遺品”と呼び、その遺品を片付けることを”遺品整理”と呼びます。遺品整理は目に見える品物だけではなく、スマートフォンやパソコン内にあるデータ(デジタル遺品)や権利なども整理する必要があるため時間と労力のかかる作業です。
そのため、葬儀後すぐではなくある程度落ち着いたタイミング、四十九日を終えた辺りを目途に始めるのがおすすめですが、始めるタイミングよりもしっかりと腰を据えて作業できる日数を探すことのほうが重要です。
遺品整理作業の大部分を占めるのが不要な品物と保管する品物の仕分け作業です。先述した通り仕分け対象となるのは故人の持ち物すべてのため、一部屋丸ごと、もしくは家一軒分の片付けを行う必要があります。加えて、この仕分け作業には持ち物の中に紛れた権利書や遺言書などの重要書類を探し出す狙いもあるため、当然時間がかかります。そのため、この工程を業者に依頼する方も多いです。
不要な品物は品種に合わせて自治体・不用品回収業者に依頼して回収してもらいます。
遺品整理は文字にするとたったの3工程で納まる作業ではありますが、相続に関わる大切な作業です。
次のような事柄に注意し、慎重に作業を進めましょう。
特に手続きに必要な権利書や、返却が必要な保険証や免許書などを不要な書類などと共にうっかり捨ててしまうケースも多いため、慎重に仕分けを進める必要があります。
遺品整理は整理品の量が多いことも要因の一つではありますが、故人ゆかりの品を整理するため一つひとつの思い出を懐かしみながらじっくりと作業を進めたいもの。そのため、作業スケジュールには余裕のある設定をすることをおすすめします。
当然のことではありますが、遺品整理にその持ち主が関わることはできません。整理を行うのは常に親族であり、遺言やエンディングノートに書かれている指示以外のことには自己判断が求められます。だからこそ「どこの業者へ依頼するか」「どの品を手元に置くか」「不要な品はどうやって手放すか」など一つひとつの判断を間違えないように慎重に吟味しながら進める必要があります。適当にただ進めるだけの整理作業では後悔することも多いですし、何より故人も喜ばないはずです。
悲しい話ではありますが、家族との別れの日は必ず訪れるもの。その日が来るまでに家族とやっておきたいことをご紹介します。
まだ元気なうちに所有している財産と持ち物を把握し、後の遺族たちが相続時に困らないようにリスト化、相続に関する願いや意志を残しておく作業です。これを行っておくことで遺品整理の負担を大幅に軽減できるため、近年注目が集まっています。
遺品整理で一番重要な作業がこの遺言書作成です。正式な形で作成された遺言には法的効力があるため、相続をスムーズに進めることができます。相続争いは物語の中だけの話ではありません。どんなに仲のいい家族であり、良い親戚づきあいをしていたとしても、ひとたび欲が絡むとわからないもの。遺言書一つで安心・手早い相続ができると言えば重要さが伝わるでしょうか。
遺言がきちんとした形式で作られた法的な文書であるのに対し、エンディングノートには法的な効力は一切ありません。しかし、生前は伝えられなかった家族へのメッセージを残したり、葬式へ参列してほしい友人のリストを載せたりと自分の個人的な希望を書き残せるメリットがあります。
遺言書・エンディングノート共に発見されなければ効力を発揮できない特徴があるため、遺言書は改ざん、廃棄を防ぐために見つかりにくい場所に隠し、その場所を書いたエンディングノートの存在を事前に家族に伝えておくなど互いに補い合う使い方もできます。
大切な人を亡くしたからといって、役所や行政は手続きを待ってはくれません。悲しみにくれながらも適切に動く必要があります。いざとなって慌てないようにきちんと段取りは覚えておきましょう。
しかし、全て自分だけで背負うのは荷が重いもの。自分の理想を叶えてくれる葬儀社を選んだうえで、わからない手続きは相談しながら進めること、生前整理をきちんと行うことで行うべき作業を明確にしておくことをおすすめします。