大切な方を亡くした悲しみの中、故人が愛用していた品物を手放すのは容易ではないでしょう。
故人を大切に思うからこそ、「処分するのは忍びない」というご遺族様のお気持ちは十分に理解できます。
しかし、現実的にはすべての遺品を手元に残しておくのは難しく、不要な遺品は処分しなくてはなりません。
そこで今回は、ご遺族が罪悪感を抱くことなく遺品を整理する方法をご紹介いたします。
気持ちをしっかりと整理し、充実した遺品整理ができるよう努めていただければと思います。
この記事を監修した人
- 小西 清香氏
- 整理収納アドバイザー
元汚部屋出身の整理収納アドバイザー。夫の身内6人の看取りや介護をし、生前整理の大切さを痛感。
また看護師時代ICUに勤務し、人の最期もたくさん見てきました。
そんな経験を元に元気なうちから生前整理を!という思いで、片付けと合わせてお伝えしています。
遺品の処分
遺品とは、故人が普段使用していた愛用品や生活用品全般、趣味で集めていたコレクションなどを指します。
遺品整理とは、いわゆる故人が使用していた物の整理のことであり、普段の片付けとは異なり、故人とご遺族の思いが詰まった品物を整理する繊細な作業です。
遺品処分を始める適切なタイミングですが、故人が持ち家に住んでおり、すぐに室内を空にする必要がない場合は、死亡後の手続きがすべて完了した後、あるいは四十九日の法要や百日法要、一回忌など、親族が集まったときに始めると良いでしょう。
いずれのタイミングも親族が家に揃っており、大切な人を亡くした喪失感が少し和らいでいる時期でもあります。
もし故人が賃貸物件や老人ホームなどに住んでいた場合は、退去日までに片付けられるよう、早めに遺品の分別、処分を進める必要があります。
故人が遺書を残している場合は、その内容に沿って遺品を整理しなければなりません。
そのうえで、手元に残す物、形見分けする物、処分する物に分別していきます。
遺書がない場合も同様に分別が必要です。
しかし、廃棄処分に罪悪感を感じたり、処分方法が分からず多種多様な遺品の取り扱いに悩む方も多いことでしょう。
適切な処分方法については後半で詳しく紹介しますが、その前に、遺品を処分する際に感じる「罪悪感」について少しお話しさせていただきます。
遺品の処分に罪悪感を感じるとき
遺品を処分するときに感じる罪悪感はどのような理由で生じるのでしょうか。
自身の感情をうまく抑えるためにも、原因を知ることはとても大切です。
思い出深い品物を処分するとき
写真や日記、手紙のように故人を身近に感じる品物は処分しにくいものです。
置き場所を取らないため、捨てる必要はないと思う方もいらっしゃるでしょう。
ただし、何十年分もの大量の日記帳や、害虫被害やカビが発生している場合は処分を検討すべきかもしれません。
写真は家族との集合写真など、お気に入りの写真のみを選び、残りは可燃ゴミとして処分しましょう。
どうしても処分できない場合は、写真店やインターネットのサービスを利用して、USBやDVDなどにまとめてもらうことができればコンパクトに保管できます。
また、人形やぬいぐるみなど、安易にゴミとして処分しづらい物は後述する「遺品供養」を行うことで、後ろめたい気持ちを感じることなく整理できます。
仏壇や神棚、遺影などを処分するとき
大きな仏壇などはマンションには置けないなど、暮らしや住居環境の変化により継承の在り方も変化さしています。
宗教色の強い遺品は気持ちの面で特に処分しにくいものです。
このような場合は、菩提寺に相談して先祖の魂を抜く閉眼供養をしてもらいます。
同様に、神棚も神社に相談をしてから適切な方法で処分すれば問題はありません。
疎遠になっていた故人の遺影を処分したい場合ですが、遺影には宗教的な意味が込められていないため、可燃ゴミとして処分しても問題ありません。
フレームやガラスは不燃ゴミとして処分できます。
しかし、遺影に開眼供養をした場合は遺影に魂が宿っていると扱われるため、閉眼供養が必要です。
仏壇や位牌には開眼供養をしますが、遺影に開眼供養をすることは稀です。
開眼供養をした記憶がない場合でも、そのまま処分することに抵抗がある場合は、供養をしたほうが罪悪感なく手放せるでしょう。
家族や親族と一緒に形見分けをしなかったとき
生前に亡くなられた方や親族と一緒に形見分けをしなかった場合、自分の判断で処分してしまうことで罪悪感を感じることがあります。
罪悪感を覚えないためにも、遺品整理は勝手な判断で進めず、できるだけ家族や親族が一同に会して行うことが望ましいでしょう。
故人との思い出を振り返りながら遺品の形見分けを行えば気持ちも整理しやすく、後々トラブルに発展する心配もありません。
不用品はその後に処分するという手順さえしっかり踏んでおけば、遺品整理がしやすくなります。
遺品整理を不用品やゴミの処分のように感じている
遺品整理で罪悪感を感じる一番の原因は、遺品整理を不用品やゴミの処分のように捉えていることです。
特に、美術品のような価値が分からないけれど故人が大切にしていた収集品や、愛用していた楽器なども含め、形見分けをした後の遺品は不用品として処分するため、どうしてもそれらをゴミのように扱っていると感じてしまいがちです。
しかし、遺品整理の専門業者に作業や回収を依頼すると、資源として再利用できる物は買取をしてもらえたり、それ以外は要望に沿ってお焚き上げなどの供養を行ってから処分してくれたりするため、遺族の気持ちを最大限に汲み取って適切に対応してくれます。
そのため、不用品やゴミのようにむやみに廃棄されることはありません。
自分が何に対して罪悪感を感じているかをしっかりと把握できてれば、それぞれに適した対応をとることで、心の負担を大幅に軽減できます。
罪悪感を感じる方へ贈る4つのアドバイス
物理的に必要な物と不要な物を区別することはできても、罪悪感に区切りをつけることはなかなか難しいかもしれません。
そこで、まずは遺品整理を始めるにあたって、ご遺族様が直面するであろう罪悪感を断ち切るためのアドバイスをさせていただきます。
故人が望んでいることを考えてみる
「故人が大切にしていた物を捨てるのはなんだか悪い気がする」というのは、「故人の気持ち」を優先している場合に当てはまります。
つまり、故人の気持ち、すなわち「故人が何を望んでいるか」を考える必要があります。
例えば親御さんが亡くなった場合、残された子供の幸せな人生を一番に望むのではないでしょうか。
おそらく、自分が残した遺品に囲まれていつまでも思い出に浸って生きてほしいとは思わないでしょう。
親であれば子供に自分の人生をしっかりと前を向いて歩んでほしいと望むはずです。
罪悪感を覚えるということは、それだけ故人を大切に思っていた証拠です。
そして、そのように思い悩むことができる方に遺品を整理してもらえるのは、とても嬉しいことです。
託された遺品と向き合う時間は、立派な供養になるでしょう。
エンディングノートに従って作業する
「故人が望んでいることを考えてみる」と先述しましたが、きちんと遺品整理に対する意思を確認したことがなく、「自分の一存で片付けていいのか判断できない」といったような思いが作業の手を鈍らせることもあります。
そのような場合には、遺品の中からエンディングノートを探してみるのがおすすめです。
エンディングノートには故人自身の意思や希望を書き記されているため、それに従って作業することはは、故人の要望を叶えることにつながります。
遺品は最終的には誰かが処分するものだと考える
もしあなたが親の遺品を大切に残していても、あなたのご家族があなたの遺品整理を行う際に一緒に処分するかもしれません。
仮にあなたの孫や曾孫の世代まで残されたとしても、その先、あなたの思いはおろか、あなたの存在をよく知らない子孫の誰かがいつか必ず処分することになります。
確かに手元に残しておきたい遺品はあるとは思いますが、故人のことを鮮明に記憶しており思い出を共有してきた人の手で適切に処分することこそが、本当の意味で供養になるのではないでしょうか。
「いつか使うかもしれない」と考える物は処分する
遺品の多くは、使う機会が年に一度だけなど、なくても困らないというケースがほとんどです。
「いつか」は来ないと考えておくのが無難です。
どうしても踏ん切りがつかない場合は無理して処分せず、”半年使わなかったら処分する”というように期日を決めて保管し、使用する機会があるかどうか様子を見ましょう。
遺品整理業者の中には、「遺品整理士」という専門知識を持つ資格所有者が在籍しているところも少なくありません。
遺品整理の際に困ったことや不安な点があれば、遺品整理士がいる業者に相談してみるのも良いでしょう。
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専門業者に遺品整理を依頼するメリット
遺品整理には「自分で行う」か「専門業者に依頼する」という二つの方法があります。
業者に依頼するメリットは、充実した遺品整理を行える点に尽きます。
滞りなく整理が進み、品物や相続などに関する相談にも的確なアドバイスをしてくれるため、効率良く遺品整理を行う手段として遺品整理業者の利用が急増しています。
遺品整理業者に依頼すると、次のようなことをお願いできます。
遺品の供養を手配してもらえる
合同供養に対応している遺品整理業者に依頼すれば、大量の品物を分別する肉体的な負担や精神的な負担を負うことなく遺品を処分できます。
遺品を処分することに抵抗を感じる理由の一つに「故人の愛用品をゴミとして処分するのは忍びない」と感じる心理がありますが、供養を経て品物の中の魂を抜き取ってから処分することで、整理・処分作業への罪悪感を軽減できます。
供養方法には「お焚き上げ」「読経」などがあるので、どのような供養に対応できるか確認しておきましょう。
遺品の処分がスムーズに進む
遺品には故人との思い出や使用の形跡が残されているため、自分で一点ずつ処分しようとすると思うように手が進まず、なかなか整理が進まないことがあります。
また、故人が収集していた価値のわからないコレクション品の売却も、一点ずつ調べながら進めると非常に手間がかかります。
遺品整理業者に依頼すれば、必要な遺品と不要な遺品を客観的に判断してもらえるだけでなく、買取査定サービスを展開している業者であれば、遺品整理を進めながら不用品を買い取ってもらえるため、遺品整理が滞りなく進みます。
形見分けなどの遺品の整理、手続きを代行してくれる
親御さんを亡くした場合、「自分は長男だから」「私が介護をしていた」などの理由で親族が勝手に遺品の整理を始めてしまうことも少なくありません。
遺品の形見分けは利害関係や私情が絡み、遺品整理の中で非常に苦労する作業の一つです。
また、役所や保険などの手続きや法的な知識を有する相続に関する手続きなども並行して行わなければならず、故人を悼みながら行う遺品整理は精神面・体力面ともに非常に負担がかかる作業となります。
しかし、遺品整理業者に依頼すれば、的確なアドバイスと迅速な作業により負担が大幅に軽減され、気持ちの整理に集中でき、充実した遺品整理ができます。
遺品の買取に対応している
ほとんどの業者が遺品の種類や量を問わず、再利用を目的に遺品の買取に応じています。
故人が大切にしていた品物を必要とする方に使ってもらうことで、故人の思いを無下にすることなく、ご遺族も心置きなく整理ができます。
また、買取によって遺品整理にかかる費用を抑えられ、ご遺族の精神面・金銭面の負担軽減にもつながります。
一見すると価値がわからない物の鑑定や、大型品の運搬も業者に任せることができます。
精神的な支えになる
身近な方を亡くして精神的に不安定な状態のまま、罪悪感や焦り、後悔と向き合いながら保管か処分の判断を下し、整理作業を進めていくことは大変困難です。
専門家である遺品整理業者が要望を汲んで作業方法を提案し、サポートしてくれることで、精神的・肉体的に強い支えになります。
自分で遺品整理をする手順と考慮すべきポイント
依頼した業者が遺品整理の専門業者でない場合や、作業がずさんな業者に依頼した場合、遺品の中に紛れ込んだ現金や貴金属などの貴重品が誤って処分されてしまう恐れがあります。
こうした事態を防ぐためには、専門技術を持ち、作業ノウハウを確立している業者かどうかをきちんと見極める必要があります。
また、時間や人手に余裕がある場合は、自分で遺品を整理することも有効な選択肢です。
ただし、すべての工程を自分だけで行う必要はありません。
希少品の捜索、事前の仕分け、定期購読などのサービスの停止作業など、できる範囲のことを自力で行うだけでも十分で、対処が難しいことや面倒な部分は業者に任せるといった柔軟な対応が肝心です。
遺品整理を自分で行う手順を大まかに分けると以下の通りです。
整理するのに必要な物を揃える
遺品整理中はホコリが舞いやすいため、健康被害を受けないように必ずマスクを着用してください。
そして汚れてもいい服を着用し、危険物から守るために軍手を用意します。
大量の品物を細かく仕分けるために段ボールやガムテープ、カッター、ハサミ、筆記用具も準備しましょう。
筆記用具があれば、どこに何があったかを記録したり、「今日はこの部屋を進めた」「あの部屋はまだ」というように、整理の進捗を可視化することができます。
遺品を処分する物と手元に残す物に分別する
まず、遺品の中から貴重品や個人情報が記録されている物を探し、誤って処分しないように分別します。
その後、残りの遺品を形見にする物、再利用する物、ゴミとして処分する物に大きく分けます。
遺言書がある場合は、遺言書に従って形見分けや遺品の整理を行いましょう。
処分する遺品をさらに分別する
処分する遺品をリサイクルやゴミとして分別し、なるべくリサイクル資源として処分に出すことで費用を抑えられるだけでなく、ゴミの排出量を削減し環境保護にも貢献できます。
思い入れがあり一般ゴミとして処分できない物は供養をしてもらいましょう。
形見分けをした後、誰も引き取り手がない遺品を処分する際には後ろめたい気持ちが残るかもしれません。
その場合、処分は最終手段と考え、遺品を活かす方法を選択してみてはいかがでしょうか。
別の物にリメイクする
着物や家具などはそのまま引き継いでも使用する機会がないかもしれませんが、着物をカバンや雑貨類に、家具を新たな品物にリメイクすることで、故人との良い思い出を身近に感じることができます。
手芸が趣味であれば自分でリメイクに挑戦することもできますし、遺品をリメイクしてくれるサービスに相談してみることもできます。
指輪を溶かして形を変えるなど、専門的な技術や設備が必要なリメイクにも対応してくれます。
売却する
リサイクルショップやインターネットオークションなどで売却する方法もあります。
特にブランド品のバッグや衣類、着物などは専門店で正確に査定してもらえば高値が付きやすくなります。
最近では出張買取や宅配に対応しているところも多く、以前と比べて利用しやすくなっています。
ご遺族の中には遺品の売却に難色を示す方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、遺品整理や法事などで金銭的な負担が大きくかかるため、家族でよく話し合ったうえで決めましょう。
リサイクル・寄付に出す
リサイクルや寄付することで、国内外の必要としている方に使ってもらうことができます。
単に廃棄処分するよりも、精神的に穏やかな気持ちで整理を進められます。
使用可能な衣類の寄付を受け付けている団体も多く、書籍類は図書館や学校、NPO法人・支援団体に寄付するなど、品物に合わせて新しい活躍の場を与えることができます。
故人もきっと安心するでしょう。
以下の記事では自分で遺品整理を行うコツについて詳しく紹介しています。
遺品一つひとつにじっくりと向き合える整理を行うための参考にしていただければ幸いです。
まとめ
故人と過ごした記憶が蘇る遺品や、故人が生前に愛用していた遺品は処分することに罪悪感を覚えるものです。
故人との思い出を振り返るために遺品を数点手元に残しておくことは大切ですが、この世にいない事実を受け止めて不要な遺品を処分することも必要です。
罪悪感を感じることなく遺品を処分できるよう、供養を手配してもらえる遺品整理業者やリメイク、寄付などを活用し、故人とゆかりのある品物を悔いなく処分できるようにしましょう。