遺品整理をしていると、「必要ないけれど故人が大切にしていたものを処分するのは心苦しい」と感じることがあるかと思います。
このような遺品は、整理を進めるのが難しいと感じることも少なくありません。
「そんなときは遺品供養(お焚き上げ)をすれば良い」と言われることもありますが、遺品整理だけでも大変なうえにお焚き上げまで行うのはご遺族にとって大きな負担となります。
そもそも遺品整理はもとより、遺品供養(お焚き上げ)の内容や依頼方法について知識がない方も多いでしょう。
そこで、遺品整理を意義深く進めるために、ぜひ知っておいていただきたい「お焚き上げ」について、ご紹介いたします。
この記事を監修した人
- 小西 清香氏
- 整理収納アドバイザー
元汚部屋出身の整理収納アドバイザー。夫の身内6人の看取りや介護をし、生前整理の大切さを痛感。
また看護師時代ICUに勤務し、人の最期もたくさん見てきました。
そんな経験を元に元気なうちから生前整理を!という思いで、片付けと合わせてお伝えしています。
お焚き上げの意義
お焚き上げの由来は五穀豊穣の儀式にさかのぼります。
古来、神事の一つに札を燃やし、その煙の流れでその年の五穀豊穣を占う儀式が行われていました。
この儀式が発展し、現在のお焚き上げ ー炎で霊を天に送る儀式— となりました。
神道では、お焚き上げは火の神の力を借りて故人の品物を天に返す意味を持ちます。
これは、物に宿った魂を元の持ち主である故人に返す行為とも言われています。
つまり、お焚き上げとは、大切にしていた遺品を故人のもとへ送り返し、天界でもその品を大切にし続けられるように祈る儀式です。
この儀式を通じて、故人の冥福を祈るとともに、心を整える機会にもなります。
お焚き上げの意義は、遺品を故人に送り届けることにとどまりません。
一般的に遺品を捨てると、故人が大切にしていたものを処分したことに対する後悔や心のモヤモヤが残ることがあります。
しかし、お焚き上げを行うことで、ご遺族は心を整え、悲しみを乗り越えた先に新たな生活を迎える準備が整います。
このように、お焚き上げは単なる遺品の処分ではなく、ご遺族にとっても故人とのお別れを意味あるものにする大切な儀式です。
お焚き上げできるもの
お焚き上げは、故人が大切にしていた遺品を浄火で供養するための儀式です。
基本的には、以下のような遺品が対応可能ですが、詳細は依頼先に確認することをおすすめします。
【お焚き上げできる遺品】
・古い写真や手紙
思い出の品としてお焚き上げが可能です。
・身に着けていた衣服や腕時計
故人が愛用していたものも供養できます。
・携帯電話や電化製品
一般的には燃えるものであれば供養対象になります。
・お守りやお札
特に神棚や仏壇と一緒に供養を推奨されます。
・日本人形
人をかたどった人形もお焚き上げ対象です。
・神棚、仏壇
特に宿っている魂を抜き取るために「閉眼供養」が推奨されます。
【注意点】
①燃えない遺品
お焚き上げは基本的に燃えるもので行いますが、燃えないものは追加料金が発生する場合があります。多くの場合、品物一つにつき約2,000円程度の追加料金がかかることがあります。
②宗教や儀式の違い
神道や仏教以外の宗教では、お焚き上げの考え方や儀式が異なるため、キリスト教やイスラム教などの信仰に基づく供養方法については、教会やモスクなどに相談することが望ましいです。故人・ご遺族の信仰に適した方法で供養すると故人もきっとお喜びになるでしょうし、ご遺族も安心して悔いのない整理が行えます。
③依頼先の確認
依頼するお寺や神社、業者によって対応が異なるため、事前に確認が必要です。また、神棚をお寺に持ち込む、遺影や位牌を神社で供養依頼するなどのマナー違反も避けるようにしましょう。
遺言状やエンディングノートに「残しておいてほしい」と書かれていた遺品は、まずそれを尊重し、大切に持っておくことが最も良い供養方法です。
その後でお焚き上げを検討する際は、故人の意思を確認しながら進めると良いでしょう。
お焚き上げの依頼方法
お焚き上げを依頼するには以下の4通りの方法があります。
①お寺や神社に依頼する
お寺や神社に依頼する場合は持ち込みまたは郵送で行います。
方法
遺品を持ち込むか、郵送で依頼します。
特徴
お寺や神社によってお焚き上げの対応が異なるため、事前に問い合わせて確認する必要があります。環境問題などからお焚き上げを行うお寺や神社は減少しており、合同供養を月一回などに制限している場合もあります。
注意点
お焚き上げを希望する時期や対応については必ず事前に確認しましょう。
②遺品整理業者に依頼する
方法
遺品整理業者にお焚き上げを含むサービスを依頼します。
特徴
多くの業者では遺品整理とともに合同供養が提供されていますが、個別供養のオプションもある場合があります。遺品整理後にお焚き上げの手配も行ってくれるため、手間が省けます。
注意点
業者によっては個別供養のオプションが追加料金になることがあります。遺品整理とお焚き上げのサービス内容を確認してから依頼しましょう。
遺品の供養も承ります。
遺品整理プログレスにご相談ください。
③お焚き上げ業者に依頼する
方法
専門の業者に問い合わせると、遺品の大きさに応じた封筒や箱が届きます。それに遺品を入れて指定された場所に送り返します。
特徴
お焚き上げ専門の業者で、遺品の大きさによって料金が変動します。遺品整理とお焚き上げのみを希望する場合に便利です。
注意点
お焚き上げ以外のサービスは提供されないため、遺品整理が別途必要な場合があります。料金体系については事前に確認が必要です。
④葬儀社に相談する
方法
葬儀社に相談し、提携するお寺や神社でお焚き上げの依頼を行います。
特徴
葬儀社のネットワークを利用して、近くのお寺や神社の情報を提供してもらえる場合があります。最近では、お焚き上げの依頼を受け付けている葬儀社も増えています。
注意点
相談する際には、お焚き上げのサービス内容や料金について事前に確認しましょう。
お焚き上げを依頼する方法には、それぞれのメリットとデメリットがあります。ご自身の状況や希望に合った方法を選び、事前に詳細を確認してから依頼することが大切です。
お焚き上げの方法
故人が愛用していた眼鏡や時計、衣類、人形などには、深い思い出や感謝の気持ちが込められているため、処分する際には心を痛めることが多いものです。
遺品供養は、これらの品物に宿る魂を鎮めるための儀式です。お焚き上げや読経、祝詞を通じて、遺品に対する感謝の気持ちを表し、故人を偲ぶ大切な行為となります。
お焚き上げの方法
①合同供養
概要
遺品をお寺や神社に持ち込むか郵送し、他の遺品と一緒に供養する方法です。
特徴
多くのお寺や神社では、月に一回程度の頻度で合同供養が行われています。ただし、神社では御札や破魔矢など神社に関係する品物のみを対象とするため、遺品の供養には対応していない場合があります。
おすすめ
無縁仏の供養や、複数の遺品をまとめて供養したい場合に適しています。
②個別供養
概要
お寺や神社で個別に遺品を供養してもらう方法です。日程を調整し、当日遺品を持ち込むか、先に郵送します。
特徴
他の遺品と一緒に供養されることに抵抗がある方や、故人に対する強い思いを持つ方に向いています。個別に供養を受け付けているお寺や神社もありますが、事前に確認が必要です。
注意
合同供養・個別供養を問わず、供養を希望する場合は事前に必ずお寺や神社に問い合わせて確認しましょう。
注意点
自宅での実施
自宅の庭などでお焚き上げを行うことは、やけどや火災、有害物質の発生などのリスクがあるため、必ず専門の業者に依頼することをおすすめします。
お焚き上げの費用相場
最後に、お焚き上げの費用についてご紹介します。
その前に、ご注意いただきたい点がございます。
お寺や神社は営利企業ではないため、価格に大きな差はほとんどありません。
そのため、お焚き上げを行う際には、価格を基準に選ぶのではなく、故人の宗教や宗派に合ったお寺や神社、または業者に依頼することが重要です。
本章で紹介する費用相場はあくまでも参考としてご確認ください。
場所 | 金額(目安) |
お寺(持ち込み) | 10,000円~30,000円 |
お寺(郵送) | お寺(郵送) |
神社(持ち込み) | 取り扱いなし |
神社(郵送) | 3,000円~10,000円(+送料) |
お焚き上げ業者 | 2,000円~8,000円 |
遺品整理業者(合同供養) | 無料(+遺品整理料金) |
遺品整理業者(個別供養) | 20,000円~(+遺品整理料金) |
それぞれ詳しく紹介していきます。
お寺への持ち込み
あくまでもお寺によってシステムは異なりますが、一般的にお寺では「ご志納」という形でお布施を支払います。
これには以下の2つの費用が含まれます。
1.遺品供養志納金(基本料金)
・基本的な供養を行うための料金です。
2.読経供養志納金(サイズ料金)
・遺品の大きさや数量によって変動する料金です。
また、不燃物が含まれる場合、追加料金(約2,000円程度)が発生することがあります。
具体的な金額や対応については、事前にお寺や神社に確認しておくことをおすすめします。
お寺への郵送
お寺への郵送の場合も持ち込みと同様にサイズで金額が決まります。
また、送料が必要になるためご注意ください。
神社への持ち込み
神社では、一般的に遺品のお焚き上げを行っていないことが多いです。
神社で有名な「どんど焼き」は、正月の行事であるため、故人の遺品を供養する目的ではありません。このため、神社への遺品持ち込みはほぼ受け付けてもらえないと認識しておきましょう。
お焚き上げを希望する場合は、お寺や専門の業者に依頼するのが一般的です。
神社への郵送
お寺と同様に、神社でも供養のシステムはそれぞれ異なりますが、郵送での遺品供養を受け付けている神社もあります。
この場合、供養費用は「玉串料」として支払います。
神社での費用は、遺品のサイズによって変動し、郵送の際には送料もかかります。
具体的な金額や手続きについては、事前に各神社に確認することをおすすめします。
お焚き上げ業者
お焚き上げ業者では、遺品のサイズに応じた封筒や箱のキットを用意しています。
これらのキットのサイズによって料金が決まります。
表に記載されている最も低い価格(相場)は、レターサイズの封筒を使用した場合の価格です。
遺品が多くなると、より大きなサイズのキットが必要になるため、料金が上がることに注意してください。
一般的に、封筒や箱は業者から支給されるため、追加の送料がかからない場合が多いです。
詳細については、業者に直接確認することをおすすめします。
遺品整理業者
遺品整理業者では、合同供養が基本サービスに含まれているため、希望する場合は通常無料で行ってくれます。
ただし、個別供養を希望する場合は別途料金がかかることがありますので注意が必要です。
また、業者は宗教や宗派に関する相談にも対応してくれるため、供養に関する悩みを解決するサポートをしてもらえるでしょう。
まとめ
今回は遺品供養としてのお焚き上げについてご紹介しました。
お焚き上げや遺品供養は必ずしも必要ではありませんが、故人を偲び、ご遺族の心の負担を軽減するために非常に意義のある儀式です。
遺品整理の際には、この記事を参考にしてお焚き上げの意義や方法を理解し、悔いのない整理を行っていただければ幸いです。