遺品には故人の思い出がたくさん詰まっています。大切な人との思い出の品といつまでも一緒に過ごしていきたいけれど、使わないものを置いておくスペースが無い、遺品が大量にありすぎてどうしたらいいか分からない、という声も良く聞きます。
そのようなときに思い浮かぶのは、「遺品は売ってもいいの?」という疑問ではないでしょうか。
遺品は売っても問題はありませんが、遺族に相談せず売ってしまうとトラブルの原因になります。
当コラムでは遺品を無断で売ってはいけない理由や、売ると決まった後の売却方法、高く売るコツなどをご紹介します。
遺品を無断で売ってはいけない理由。
それは遺族が故人を思い出すために、手元に残しておきたいと希望している物が含まれている可能性があるためです。
関西大学社会学部の池内裕美教授が著した「遺品や形見の持つ意味 ― 対象喪失の心理 」によると、家族など亡くなった人を具現化し、心理的関係を継続するために非常に重要な役割を果たす物の一つが、遺品や思い出の品、形見であると述べられています。
*参考サイト
【「遺品や形見の持つ意味 ― 対象喪失の心理 ―」池内 裕美」】
遺品は物を通して故人の存在を感じるための役割を持ち、残された遺族の心を支えてくれます。
大切な人を亡くした喪失感が癒えていないのに、相談せずに売ってしまうと遺族同士のトラブルに発展してしまうかもしれません。
貴金属や宝石、骨董品など生活用動産に含まれない高級品は、1個または1組あたりの売却金額が30万円を超えると課税の対象になります。
生活用動産とは、家具や家電、日常生活に使用できる衣類など生きていくための生活に必要な物を指します。
貴金属や宝石、骨董品は生活必需品ではないため税金が発生する可能性があります。 原則として生活用動産には税金はかかりませんが、家具であっても高級品の家具などは課税対象となる場合もあります。 また、売却金額が30万円以上であっても譲渡所得の特別控除が適用される場合もあります。
すべての遺品を売った金額が50万円以下であれば特別控除が適応され、税金を支払う必要はありません。 そのため、必ずしも売却価格が30万円以上になれば税金を支払わなければならないというわけではありません。
遺品の売却が問題ないと判明して次に考えることは、どんな物が高く売れるのかという疑問ではないでしょうか。
一見価値がないと思えるような物でも、思いのほか高額で売れる場合があります。
故人がコレクションしていた美術品や工芸品に限らず、懐中時計や勲章など故人がお仕事で使用されていた小物も骨董品に該当します。
筆者の祖父は船員だったため、遺品整理中に押し入れからコンパスや気圧計などの遺品が見つかりました。
価値がわからない物でも、現在ではまったく目にしない品物を収集しているコレクターが存在している可能性があります。
歴史的な価値があるのではと感じる遺品が見つかった場合は、処分せずに一度保管しておきましょう。
相続したものの、趣味にあわず身に着ける機会がないと売ってしまう方が多い貴金属。
貴金属は1gあたりの相場で取り引きされ、安定して高価買取につながりやすいのが特徴です。
有名ブランドの貴金属はブランド品、ブランドがない物は貴金属として買取査定に出すと適切な価格で買い取ってもらえます。
ブランド品は状態が良ければ高く売却できます。遺品整理の中で出てきたブランド品は、型やデザインが古い物が多いかもしれません。
古い型やデザインでも人気が高い物であれば高く買い取られるため、不要なブランド品は状態が悪くなる前に売却するといいでしょう。
現在は入手できないスニーカーやゲーム機、トレーディングカードなどのプレミア品や限定品はコレクターからの需要が高く、高く買い取ってもらえる場合があります。
遺品を売るにはどのような方法があるのかご紹介します。
遺品整理業者によっては、遺品の分別・不用品回収だけでなく、遺品の買取査定も一括で引き受けてくれる場合があります。 すべて1社にお任せできますから、時間のない方や遺品が多く分別が大変という場合は利用してみてはいかがでしょうか。 しかし、遺品の品目や状態によっては買取査定を断られてしまう場合もあります。
買取専門業者とは、街中やCMなどで見かける様々な品物の買取を行っている店舗型の業者です。全国展開の大型店舗もあれば、個人経営の小型店舗まで多くの買取業者が存在しています。買取専門業者によって得意としている査定品目が異なりますので、事前に調べてから持ち込むようにしましょう。
フリマアプリやネットオークションに出品すれば自宅で簡単に遺品を売却できます。
インターネットで売るメリットは、販売価格を出品者の希望価格に設定できる点です。
コレクターがいる商品は、遺品整理業者や買取業者に依頼するよりも高額がつく可能性もあります。
筆者も遺品を数点フリマアプリに出品しました。価値がないと思っていた雑貨に購入希望者が現れ、自分が知らない高い需要があるんだと驚いた経験があります。
フリマアプリやネットオークションは全国規模で遺品を販売できるため買い手が見つかりやすいです。
ただし、売れるか売れないかは出品してみないとわかりませんし、梱包や発送の手間も掛かります。
また、購入者とのトラブルも自力で対応しなければなりません。 国民生活センターによると、フリマアプリに関連した相談が2012年から2017年の間に20倍近く増加したと発表されています。
顔が見えないまま取り引きをするフリマアプリでは、商品代金が支払われなかったり、禁止事項を持ちかけられたりなどのトラブルが多発しています。
運営事業者に相談しても解決に至らない場合は、消費者センターなどに相談するよう注意が呼びかけられています。
*参考サイト
【「相談急増!フリマサービスでのトラブルにご注意-個人同士の取引であることを十分理解しましょう-」国民生活センター】
遺品をなるべく高く売るためには、遺品を新品に近い状態で査定に出したり、専門の買取業者に査定してもらうことがコツになります。
付属品が残っている場合は、鑑定書や保証書、箱や袋、紐などの付属品もセットにして売るようにしましょう。状態が悪いと遺品整理の際に捨ててしまいがちですが、付属品とあわせて売ると高い買取評価を得られやすくなります。
遺品にホコリや蜘蛛の巣などが付着している場合は、買取査定に出す前にやわらかい布などで拭いておきましょう。 しかし、遺品の材質によっては水や洗剤が付着すると変色したり、変形してしまう物も含まれます。デリケートな素材で作られた遺品は、無理に掃除をする必要はありません。
買取業者はそれぞれの店舗や鑑定士によって得意分野があります。 特に骨董品は贋作も多く、目利きが非常に難しいので骨董品を専門に扱う鑑定士でなければ適切な査定はできません。その品目に精通している店舗や鑑定士に査定してもらうようにしましょう。
遺品を売っても問題はありませんが、遺族に無断で遺品を売ってしまうとトラブルの原因になりますので注意が必要です。
また、遺品を30万円以上で売却した場合は税金が発生する場合がありますので、高価な遺品を売却する際は掛かる税金の知識もしっかりと理解しておきましょう。
そして遺品を売る場合は、高く売れる遺品の種類や高く売るコツを事前に押さえるのも重要です。 故人の思い出が詰まった遺品。遺族全員が納得して売却できるよう、基本的な知識を押さえておきましょう。