近年、少子高齢化と核家族化が進み、高齢者の一人暮らしが増加傾向にあります。
「一人暮らしの自分が亡くなったら、後のことはどうしよう」「一人暮らしの親戚がいるが、亡くなった後、どう対応したら良いのだろう」と考えて不安になることはありませんか?
こちらのコラムでは一人暮らしで亡くなった場合に何をすれば良いのか、また一人暮らしをする本人とその家族・親戚が前もってしておけることも含めて解説いたします。
まずは、一人暮らしで亡くなった場合に知っておきたいことや起こり得る困りごと、気を付けたいことを6つご説明いたします。
基本的に遺族(配偶者・親・子・兄弟姉妹・祖父母・内縁者含む)が故人の遺品整理を行うことになります。身寄りがない場合には、役所が故人の戸籍をたどって親族を探して連絡します。
遺品整理の対象となるものは故人が残した日用品、家具、家電など住んでいた家の中にあるもの全てになります。
冒頭でもお話ししたように、高齢者の一人暮らしが増えたため、それに伴って孤独死も社会問題になってきました。一人暮らしをする中で亡くなってしまうと、発見が遅れてしまうことも多々あります。死後の経過時間が長いほどご遺体の腐敗が進んでしまい、漏れ出した体液で床などが汚れ、シミになったり、腐敗臭が染み付いてしまうこともあります。また害虫が発生するケースも少なくありません。そうなると通常の清掃では解決できず、原状回復のためには『特殊清掃』が必要になります。
現金・預貯金・保険・有価証券・不動産などの個人が遺した財産の中で資産価値があるものを遺産といいます。所有していた本人が亡くなった後で、どれだけ持っていたのかを遺族が全て把握するのは大変で、調べるのにも時間がかかってしまいます。スマートフォンやパソコンのデータも忘れずに確認しなければいけません。加えてパスワードが分からなくて困ったというケースもよく聞きます。またプラスの財産だけでなく、借金・ローン・未払い金などのマイナスの財産も遺族に引き継がれるので、これらも把握することが必要です。
興味の無い人からみると不用品に見えるものでも、実は金銭的に高い価値のある美術品だったということもあります。美術品に限らずコレクターがいるような金銭的価値のあるものであれば相続財産ということになり遺産です。誤って捨ててしまうことがないように気を付けなくてはいけません。
また金銭的価値は無く、一見すると不用品に見えるものでも、遺族の誰かからすると故人との思い出が詰まった大切なものかもしれません。形見分けするものなのか不用品なのか、などの判断はとても難しいといえます。
高齢になると体力も落ちてマメに掃除や片付けができなくなってきます。また収集グセや認知症による影響で物が捨てられない人もいます。そうなると遺品整理の際に、量が多くて苦労します。さらに故人が実家暮らしの場合、親や兄弟の遺品もそのまま残っていて膨大な量になっていることもあるのです。
故人の住まいが賃貸だった場合、多くは月末までに退去しなくてはいけません。遺族が賃貸契約を延長できることもありますが、その分の費用が掛かります。
1章を読んでいただくと、遺品整理がいかに大変なものかご理解いただけたかと思います。この章では残された遺族が遺品整理で苦労しないように、一人暮らしをする本人が生きているうちに準備できることを3つご紹介します。
「生前整理」とは、自分が元気なあいだに所有する財産や持ち物などを整理しておくことです。生前整理をすることで、自分自身を見つめ直し、本当に大切なものが分かり、後の人生をより有意義に過ごせるようになります。
生前整理を始めるのに早すぎるということはありません。自分だけでなく、家族も一緒に始められるように話し合ってみるのもおすすめです。
もちろん無いほうが良いのですが、万が一、孤独死を迎えても早く見つけてもらえるように、家族と「〇日間連絡が無ければ確認してもらう」などの約束事を決めておくのも良いでしょう。
生前整理と共に「エンディングノート」を書いておきましょう。
マイナンバー、健康保険番号、運転免許番号などの公的な情報、スマートフォンやインターネット、クレジットカード、光熱費などの契約情報(支払い方法、契約解除の際の連絡先、SNSのID・パスワードなど)、かかりつけの病院や発作時に飲むべき薬の詳細などといった、家族に共有しておきたい情報を記載しておきましょう。
これらは自分の死後でなくても、事故や病気で意識が無い状態になってしまった、という場合にも役立ちます。
また遺族や大切な人へのメッセージや、形見分けをしたいものの詳細(「何を」「誰に」「いつ」など)も書いておきましょう。
最近は市販でも様々なエンディングノートが買えるようになりました。予め書く項目が記載されているものも多く選択肢が豊富なので、自分に合ったものを選んでみてください。
自分の死後にお金が必要になることもあります。例えば葬儀費用、お墓を建てるのに必要な費用、遺品の処分費用などです。もしそれらの費用分を貯めておく余裕があれば準備しておきましょう。
この章で残された遺族がスムーズに遺品整理を進められるよう、やり方をご説明します。
1章の第3節でもお話ししましたが、まずは遺産を全て把握する必要があります。預金通帳・有価証券・生命保険証書・土地の権利書・借用書など必要な書類を全てまとめておきましょう。近頃はネットバンク口座やネット証券口座なども多いので、スマートフォンやパソコンも忘れずに確認しましょう。
形見分けするものと不要なものを分けていきましょう。写真やビデオなどはデータにして残す方法もあり、保管スペースを大幅に減らすことができます。
仏壇や神棚などの宗教的なものは菩提寺や檀那寺の住職、氏神神社の神職に相談し、処分方法を確認しましょう。仏壇は「御霊抜き(みたまぬき)」を行い、神棚は神様に神社へお帰りいただいたら、後はゴミとして処分することができます。
その他にも故人の思い入れが強いものがあれば遺品整理業者によってはきちんと供養してくれる場合もあるので、確認して依頼しましょう。
前章まででは、本人が生前にできること、そして遺族が遺品整理を行う方法についてご説明してきました。この章では遺品整理を専門業者に任せる場合のメリットや費用についてご紹介します。
遺品整理業者は遺品を整理することはもちろん、不用品の回収、遺品の供養などを専門に行っている業者です。それぞれの業者によって手掛けるサービス内容の幅は様々で、不用品のリサイクルやハウスクリーニング、リフォームなども併せて行えるところもあります。
「忙しくて遺品整理にかける時間が取れない」「遺品の量が多すぎて手に負えない」といった場合には遺品整理業者に任せるのがおすすめです。
ご遺体の発見が遅れてしまった場合には、腐敗が進み、漏れ出した体液や腐敗臭がこびりついてしまうことがあります。また害虫が大量に発生しているようなケースも。こうなってしまうと通常のハウスクリーニングでは原状回復できません。遺品整理業者の中にはこういった状況でも原状回復できる「特殊清掃」の技術を行えるところもあります。
遺品整理の費用は多くの場合、部屋の広さと遺品の量で決まります。中には「トラックの荷台に積み放題でいくら」といった料金設定の業者もあります。また基本料金以外に「運送料」「人件費」「植木処分費」など、追加料金が発生するところもあるので事前に詳しい見積もりを用意してもらいましょう。
特殊清掃が必要な場合は、それにかかる費用をマイナス資産として計上することができます。遺産相続権を持つ親族が複数人いる中で、特殊清掃費用が依頼者ひとりの負担になってしまわないよう遺産分配前に確認しましょう。
遺品整理業者の中には悪質なところも存在します。初期見積もりは安かったのに、後から法外な費用を請求されるケースや、本当は資産価値があるものを「価値が無いので処分する」と依頼者に伝え、勝手に売却し利益を得ていたり、廃棄物処理の資格を持たず不法投棄を行う、遺品整理の最中に貴金属や現金を盗難するなど度々事件になっていることもあります。
そういった悪質な業者を選んでしまわないように、遺品整理業者を見極めるポイントをお伝えします。
・ホームページの作りがしっかりしている
・口コミやサービス体験者のリアルな声が多く信用性がある
・料金設定が明確になっており、見積もりも詳しく分かりやすい
・複数の業者で相見積もりを取る
・相見積もりやプラン内容について詳細な説明を求めても気持ち良く対応してくれる
・必要な資格を持っているか確認する
いかがでしたでしょうか。遺品整理ではとてもやることが多く、大変な印象を受けたかもしれません。しかし、一人暮らしをする本人とその親族が事前に少しずつ始められる生前整理も併せて効率良く行っていくことで負担も減らし、スムーズに行うことができます。
それでも「遺品の量が多い」「ご遺体の発見が遅れてしまった」などのときには、自分に合った遺品整理業者をしっかりと見極めて選んでください。