うつ病や精神的なストレスで自宅の掃除や片付けができなくなる人もいます。
「実家に帰ると、家の中がぐちゃぐちゃだった」
「離れて暮らす親が沈みがちで元気がない」
高齢期のご両親がこうした状態に陥っている場合は、ご両親の健康を何よりも優先させながら、いつか来る遺品整理で困らないにために早めの対策を考えておきましょう。
うつ病と片付けられないことの因果関係、ご両親がうつ病のときの対処方法について紹介します。
この記事を監修した人
- 小西 清香氏
- 整理収納アドバイザー
元汚部屋出身の整理収納アドバイザー。夫の身内6人の看取りや介護をし、生前整理の大切さを痛感。
また看護師時代ICUに勤務し、人の最期もたくさん見てきました。
そんな経験を元に元気なうちから生前整理を!という思いで、片付けと合わせてお伝えしています。
うつ病とは
うつ病は、様々なストレスが原因で発症する心の病気です。
精神を安定させたり、やる気を起こさせたりする脳内の神経伝達物質「セロトニン」と「ノルアドレナリン」が減少する病気と考えられています。
これらの神経伝達物質が減少すると気力が失われ、憂うつな状態になってしまいます。
周囲からは本人にやる気がなく怠けているように見えるため、本人の気の持ちよう次第で回復できると思われがちです。
うつ病は日本人の約15人に1人が一生のうちにかかるという非常にありふれた病気で、適切な治療が必要になることを認識しておきましょう。
参照:厚生労働省「こころもメンテしよう~若者を支えるメンタルヘルスサイト~」
高齢者のうつ病の特徴
老年期になると、環境的・心理的にストレスが増えやすくなるといわれています。
例えば、退職や子どもの独立、配偶者の死などによって孤独感が増したり、加齢により心身機能が低下したり、老年期特有のストレスによって、うつ病を発症する確率が高まるのです。
もしご家族に高齢の方がいれば、社会との関わりを絶やさないように見守ることが大切です。
孤立やうつ病予防にもつながりますので、積極的にコミュニケーションをとって一緒に出掛けたり、運動やスポーツの機会を設けたりしましょう。
うつ病と片付けられないことの関係
病気が原因で片付けられなくなることも考えらえます。
そのひとつが「うつ病」です。
うつ病になると、気力がなくなったり、集中力や思考力が低下したりするため、料理や掃除をうまくできなくなる場合があります。
また倦怠感も増すため、片付けを始めても最期までやり遂げるのが難しくなることもあるようです。
そうした状態がしばらく続けば、家の中に物が散乱してゴミ屋敷化する可能性が考えられるでしょう。
これまで整理整頓ができていた親御さんに片付けられない兆候が見られたり、次のような様子があったりすれば注意が必要です。
・気分の落ち込みが激しいときがある
・何事にも興味を示さず、喜ぶ様子が見られない
・食欲が増える、もしくは減る(体重の増減が著しい)
・落ち着きがない
・疲れやすい
・過度な睡眠や不眠症気味
・自分を責める(自分には価値がない、自分が悪いなどと思い込む)
・死について考えていることが多い
・集中力が続かない
こうした兆候が見られる場合に、医師はうつ病を疑うそうです。
もしも親御さんに複数の兆候が重なって見られるようなら、医師に相談してみましょう。
参考:国立長寿医療研究センター
部屋が片付けられない状態をそのままにすると
もし部屋が片付けられなければ、一体どうなるのでしょうか。
起こりうるリスクを考えます。
部屋として機能しなくなり、生活の質が低下する
部屋を片付けずに物を溜め込んでしまうと、部屋が使えなくなってしまいます。
床の上に溜まったゴミをよけたり踏んだりして歩きにくくなったり、水回りにも物が溢れて使えなくなったりして、室内での日常生活に支障をきたします。
日頃から掃除を心掛けていれば、片付けを苦痛に感じることはありませんが、一度散らかった状態に慣れてしまうと、元の状態になかなか戻せなくなります。
床やソファ、ベッドの上にゴミや物が散乱していれば、自宅でゆっくりとくつろげません。
「これくらいならまだ大丈夫」と自分自身を納得させようとしがちですが、日常生活に問題が生じてから対処するのでは遅すぎます。
清潔感がなくなる
ゴミや物があれば、当然その場所は掃除できず汚れが溜まり続けます。
風呂場や洗濯機の中にもゴミを溜めてしまうと使えなくなり、不潔な状態で仕事や学校に行かなければなりません。
ゴミ屋敷は室内の汚れに着目しがちですが、住人の外見にも影響が現れます。
害虫や害獣が発生しやすくなる
食べ物の空き容器や生ゴミなどをそのまま放置していると、臭いに引き付けられてハエやゴキブリ、ネズミなどの害虫や害獣が発生しやすくなります。
そのまま放置していると隣近所の家でも発生するようになり、近隣トラブルになりかねません。
火災の危険が増す
放置された大量のゴミに火が引火してしまうと、たちまち火が広がります。
喫煙者ならタバコの火が火事を引き起こしかねませんし、喫煙者でなくても台所にゴミや物をたくさん放置していれば調理中に引火する恐れがあるため非常に危険です。
ゴミ屋敷にはあらゆる種類の物が混在しています。
万一危険物に引火すると、命に危険が及ぶ大火災が発生する可能性も否定できないほど危険なのです。
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うつ病の親の家を片付けるメリット
うつ病の可能性がある親の家を片付けて得られるメリットについてお話します。
遺品整理の負担が軽くなる
もちろん片付けたからといって、うつ病が改善するわけではありません。
しかし遺品整理を兼ねて片付けを進めておけば、親が亡くなったときも遺品整理で困りません。
親がいるうちに不要な物を処分したり、財産目録を作成したりしておけば、作業の負担は大幅に軽くなります。
遺品整理は、故人が生前に準備をしていなければ、家族に大きな負担がかかります。
親の心的ストレスを軽減できる
部屋が片付けば生活しやすくなり、親御さんの心的ストレスを軽減できるかもしれません。ストレスを抱えたままでは、病状が悪化する可能性もあります。
うつ病の親の家を整理する方法
うつ病などの精神疾患が原因で片付けがうまくできない場合は、ゴミ屋敷にならないよう早めに対処しなければなりません。
具体的にどうすればいいか、いくつかの方法を紹介します。
体調がいいときに1日で片付ける
うつ病の方の家を片付けるには、「ご本人の調子が優れているときに行う」ことが最も重要です。
気持ちの波があるので、うつ病であっても体調が優れている日も存在します。
その日のうちに片付けを済ませれば、ご本人のストレスも最低限で抑えられるでしょう。
どうすれば1日で片付けられるのか、家族や友人の協力を仰いで良い方法を考えてみてください。
「片付けられない」「時間がかかる」という方は遺品整理業者へ相談を
短時間で片付けられそうにない場合は、遺品整理業者に相談することをおすすめします。
遺品整理業者の多くは、生前整理やゴミ屋敷の片付け作業にも対応しています。
業者に依頼すると様々なメリットはあります。
①物の仕分けから整理、掃除まで早ければ数時間で完了する
②家具など大きくて重い物も動かして回収してくれる
③どのような物も回収してくれる
④本人が立ち会わなくても作業可能な場合がある
⑤生前整理のアドバイスもしてもらえる
経験豊富な業者では、遺品整理士の有資格者が在籍しており、各種の許認可も保有しています。
そうした業者では、うつ病などの精神疾患や認知症の方に対する理解も深く、いろいろ相談に乗ってもらえるでしょう。
ご本人やご家族の希望に柔軟に対応してくれるはずです。
まとめ
高齢者特有のストレスによって、うつ病を患う高齢者も少なくありません。
うつ病による無気力や集中力・思考の低下により、自宅の片付けや掃除ができなくなる場合があります。
うつ病が疑われるときは、医療機関を早めに受診することが大切です。
もし親御さんがうつ病で片付けができなくなっているなら、体調がいいときに一緒に片付けをしましょう。
親御さんのストレスが軽減されるうえ、生前整理を兼ねて整理できます。
生前整理を一緒に進めておけば、遺品整理の負担が軽くなりますので、できるだけ取り組んでいただきたいと思います。
もしご家族だけで片付けられない場合は、遺品整理業者に相談してみるといいでしょう。
経験が豊富な業者であれば、うつ病や認知症などの人への理解も深く、遺品整理を考慮して整理を進めてくれるはずです。