孤独死を招く一因として、セルフネグレクト(自己放任)というものが挙げられます。女性のセルフネグレクトは様々な理由で起こり、また、外見からは気づかれにくいため、対処せず放っておくと孤独死を招き親族の遺品整理を困難にします。
当コラムではセルフネグレクトの特徴や、若い女性がセルフネグレクトになりやすい理由を中心に解説します。
この記事を監修した人
- 小西 清香氏
- 整理収納アドバイザー
元汚部屋出身の整理収納アドバイザー。夫の身内6人の看取りや介護をし、生前整理の大切さを痛感。
また看護師時代ICUに勤務し、人の最期もたくさん見てきました。
そんな経験を元に元気なうちから生前整理を!という思いで、片付けと合わせてお伝えしています。
セルフネグレクトとは
ネグレクトという言葉は一般的に子供や高齢者など保護するべき対象を保護せず放棄することを指します。
したがって、セルフネグレクトは日常生活に対し関心を失う自己放任という意味になります。
健康状態や生活環境が著しく悪化しても放置するなど、自分自身への虐待行為が見られます。
例えばゴミ出しが面倒で部屋がゴミだらけになる、お風呂に入らなくなる、体調を崩しても病院に行かないなどです。
セルフネグレクトは年代、性別にかかわらず誰にでも起こり得る心の病気で、自覚しづらいという特徴があります。気づかずにそのまま放置していると、人との関わりも次第に減り、生活環境や健康状態は悪化の一途を辿って最終的に孤独死や孤立死を招きます。そのため、緩やかな自殺と表現されます。
また、女性のセルフネグレクトは男性と比べ働き盛りの世代(20代〜40代)の孤独死を招きやすいと言われています。
次の章より女性のセルフネグレクトを取り巻く状況を掘り下げていきます。
セルフネグレクトになりやすい女性の特徴
女性のセルフネグレクトの特徴がどのようなものかを見ていきます。
女性のセルフネグレクトは男性のセルフネグレクトと比べ、周りから気づかれにくいのが特徴です。
気付かれにくい理由ですが、女性は自宅がゴミ屋敷状態だったとしても身だしなみをきちんと整えるため、見た目では判断が難しくなります。そのため、外では問題を抱えていると一見気付かれません。意外かもしれませんが、きちんとした身なりの女性でも家の中は足の踏み場もないほど散らかっている、という光景は少なくありません。
また、下記で挙げるような特徴を持つ女性も生活環境が悪化しやすく、セルフネグレクトに陥るリスクが高いと言われています。
仕事が激務
いわゆるキャリアウーマンやサービス業の女性は仕事が忙しく、基本的な家事をする気力や満足な食事をする時間がない日々を過ごしているため、食生活が投げやりになったり掃除が追いつかず生活環境が悪化しがちです。
また、住んでいる場所のゴミ出しのルールが厳しい場合はゴミ出しをしたいのにできない状態になってしまい、どんどんゴミが溜まります。特に夜勤がある看護師や介護士など生活が不規則な仕事の女性はセルフネグレクトに陥る可能性があります。
掃除が苦手
そもそも掃除が苦手な女性や、整理整頓が習慣づいていない女性は部屋の中が散らかっていても片付けが追いつかず、生活環境が悪くなります。
世間的に女性の部屋=きれいというイメージがあり、そのため「女性なのに部屋が汚い」などと思われると心理的に抵抗が起こります。結果、周りの人に頼って片付けを手伝ってもらったり、業者への依頼にためらいを感じてしまいます。そして片付けられないという悩みから自己嫌悪になり、片付けを放棄し続けるとやがてセルフネグレクトに陥ってしまいます。
物を捨てられない
「もったいない」「物を大切に」という気持ちが強い方も危険です。
捨てられない物で次第に部屋がいっぱいになり、生活が不便になります。
不便な環境で生活し続けるとストレスが溜まり、セルフネグレクトのリスクが高まります。
周囲に助けを求められない
悩みがあっても自力で何とかしようとする、人に頼ることに強い抵抗を持つような性格の方も注意が必要です。
悩んでいたとしても「甘えだと思われそうで恥ずかしい」「イメージが悪くなるかもしれない」と抱え込んでしまい、大きなストレスがかかります。解決できなければ自己嫌悪のきっかけにもなり、片付けを放棄し続けてセルフネグレクトへと陥ります。
孤独や不安がある
人間関係が希薄だったり社会的に孤立している女性は、孤独や不安を埋めるために物を大量に購入し寂しさを紛らわせている場合があります。
自宅の隙間を埋めるように服や雑貨が積み上げられていき、生活に不便な空間ができあがります。このような女性は処分に強い抵抗感を覚えるため、部屋がなかなか片付かない傾向があります。
若い女性のセルフネグレクトの増加
近年は若者の貧困も問題視されていますが、非正規雇用者数の多さからみて、女性は特に経済的な問題からセルフネグレクトへ発展しやすい特徴があります。
経済的な問題がある
貧困はセルフネグレクトの主な原因の一つですが、特に女性は非正規雇用の割合が男性よりも高く、経済的問題でセルフネグレクトに陥りやすい、という背景があります。
総務省統計局の「労働力調査(詳細集計)2022年(令和4年)平均結果」によると、男性の非正規雇用者数669万人に対し、女性の非正規雇用者数は1432万人と女性の数が2倍以上であると発表されました。
・参考サイト【「労働力調査(詳細集計)2022年(令和4年)平均結果」総務省統計局 】
例えば、子育てのために正社員を退職しその後に離婚した場合、生活のために再就職を試みても空白期間の長さから再就職に至らず、給与の低い非正規雇用の仕事を選ぶでしょう。その結果、貧困状態で子育てを続けているうちに自分自身をケアする余裕は減少します。
これは単身世帯にとっても他人事ではありません。貧困状態に陥っていると食事にお金をかけられず、安価でお腹が膨れるインスタント食品や菓子パン、酷い場合はスナック菓子がメインの食事になります。このような食生活が続くと栄養が偏るため健康にも被害がでますが、お金がないため病院へ通うのも億劫になります。
そして株式会社ツムラは20代〜50代の女性10,000人を対象に、不調なのに我慢して家事や仕事を行っている「隠れ我慢」の実態調査を行いました。報告によると、「不調を我慢して家事や仕事をしているか」という質問に20代〜30代の若い世代が最も「頻繁にある」「時々ある」と回答したと発表されています。
・参考サイト【隠れ我慢調査「女性の8割が、不調を我慢して仕事や家事をこなしている。」株式会社ツムラ】
20代〜30代の若い世代は仕事や家事で忙しく、無理をしてでも頑張らなければならない状況に頻繁に立たされがちです。そのため、疲れを溜め込みやすく、体調を崩してしまったり、うつ病を患ってしまう危険性も高いとわかります。
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あなたは大丈夫?セルフチェック
セルフネグレクトは自覚しづらいものです。大丈夫だろうと思っている方も、一度セルフチェックをしてみてはいかがでしょうか。
〇が多いほどセルフネグレクトの可能性は高くなります。
1.ゴミを出せていない、部屋に溜まっている
2.いつも同じ服を着ている
3.郵便物は放置している
4.電気がつかないなど不便な状況でも放置している
5.食事が適当になっている
6.一ヶ月のうち、家から出ない日のほうが多い
7.お風呂、洗顔、歯磨きが疎か
8.物が捨てられない
筆者は3番と8番が該当しました。
帰宅する時間がどうしても遅くなってしまうため、郵便受けや部屋の片付けを後回しにしてしまいます。身の回りの整理整頓を先延ばしにしている証拠だと感じたので、今日から少しずつ不要な物を片付けていきたいと計画しています。
セルフネグレクトを予防するには
セルフネグレクトは孤独や孤立と密接な関係を持つため、一人で過ごす時間を減らして人との交流を増やすと改善できると言われています。
習い事やボランティア活動を始めたり、定期的に友人とお茶をするなど人と直接顔をあわせた交流が重要になります。
筆者は孤独感を抱えないように、定期的に友人とお茶をする機会を作っています。
お互いの近況報告はもちろん、悩み相談もできます。対面であれば電話や文章では伝わりにくい感情も伝わりやすく、孤独感やストレスを解消できる貴重な機会だと実感しています。
また、生活環境を整えるのも大切です。セルフネグレクトに陥りつつある女性は部屋が汚くなりがちです。
部屋の片付けや掃除が追いついていないなら、不用品回収業者やハウスクリーニング、整理収納アドバイザーに依頼しましょう。また、高齢の方は生前整理として遺品整理業者に相談するのも一つの方法です。
まとめ
女性のセルフネグレクトは他者からは見えづらいという特徴を持つため、支援が手遅れになる場合もあります。
特に20代〜30代の若い女性は仕事や育児など、不調を感じても頑張らなければならない状況に立たされる機会が多いため、ストレスや不安を限界まで溜め込みセルフネグレクトを起こしてしまう傾向があります。
身近にセルフネグレクトの特徴を持つ女性がいるなら、声を掛けてあげたり、必要に応じて専門家への相談を勧めるなどの支援をしてあげましょう。