大切な家族を亡くした後にはその方が愛用していた品々が残ります。身の回りのものから机やソファ、タンスなどの家具や家電類はもちろんのこと、保険や税金、遺産相続に関する諸手続きまでさまざまな物を整理・処分しなければならず、想像以上に負担が大きくのしかかる作業だということを理解して取り組まなければなりません。ご遺族様だけで進めることが困難な場合も起こり得るため、遺品整理の専門業者への依頼もあらかじめ念頭に入れておくことも大切です。
今回は、ご家族がお亡くなりになった後の実家の遺品整理の進め方について詳しく説明していきます。
親が亡くなり四十九日の法要が終わる頃から遺品の整理を行う方が一般的には多く見受けられます。実家の遺品整理をどのように進めるべきか、その手順を確認してみましょう。
同居家族の有無や持ち家か賃貸住宅かなど、故人の生活様式によって遺品整理の進め方は異なります。同居の場合は急いで整理を進める必要がなく、気持ちの整理ができてから始めることができます。
しかし、故人が一人で暮らしていたのであれば家が無人になるため早めに遺品整理と向き合わなければなりません。実家を手放すのか、それとも新たに活用するのか、まずはそれらを決めてから遺品整理に取り掛かるようにしましょう。
親の遺品を整理するのは基本的に子どもや孫などの相続人です。相続を放棄する場合は遺品の整理に携わらないようにしなければなりません。遺品は形見分けや相続する物と処分する品を分けながら整理していかなければならないため、家族や兄弟、親族が一同に集まる四十九日などの法要の際に話し合いを行ってスケジュールを調整すると良いでしょう。
ほとんどの方が遺品整理をどのように始めるかわからないと思います。要点だけを整理しておきましたので、ぜひご参考にしてください。
悲しみに打ちひしがれて精神的に辛い状態のまま始めてしまうと思うようには進みません。いつかはやらなければいけませんが、ある程度心の整理が付いてから始めるようにしましょう。
遺品整理を進める前に遺言書と相続財産に該当する物があるかどうかを確認しなければなりません。故人の机の引き出しや棚、金庫など重要な書類を納めているような場所を探してみてください。最近はパソコンやスマートフォンの中に取引記録が保管されていることもあるため、ロックの解除や操作方法が困難な場合は専門の業者に相談する必要があります。
相続人全員が集まれるときに捜索するようにすると、相続トラブルを回避することができます。
■相続財産の一例
・現金
・預金通帳
・株式、債券などの有価証券
・生命保険証券
・土地や建物などの不動産
・金、宝石、高級時計など
・年金手帳
・骨董品や絵画などの芸術品
相続財産が高額な場合は相続税が発生し、死後10カ月以内に納税しなければなりません。相続税はプラスの財産(預貯金や土地)から非課税の物やマイナスの財産(債務・葬儀費用など)を差し引いた総額で計算されます。相続税がかかるのは基礎控除額を超えた場合で、相続する額に応じて税率や控除額は違います。不明な場合は税理士や司法書士などの専門家に相談しましょう。
「まずはこの部屋から」というように整理する範囲を決めて順番に進めていくようにしましょう。ただし整理をする範囲が広い場合は部屋やフロアの担当場所を決めて、それぞれが責任を持って取り掛かると良いかもしれません。処分の基準を定めて全員が共有していれば、別々に整理をしてもトラブルが起こらずスムーズに進められます。
遺品整理では手元に残す物、形見分けする物、処分する物の3種類に分けます。処分する場合もリサイクルショップや専門業者に買い取ってもらえる場合もありますし、一般ゴミでは処分できず専門の業者に回収を依頼する物もあるなど、品物ごとに処分方法は異なるはずです。後のことを考え、処分する物を一括りにしてまとめて置くのではなく、処分方法に応じて分別するようにしましょう。
コツさえしっかりと押させていれば、実家の遺品整理をスムーズに進めることができます。
勝手に遺品を整理してしまったがゆえに家族間でトラブルに発展することは非常に多いため必ず相続人全員で整理を行うようにし、処分する物を皆が把握するようにしてください。処分品をまとめたら残しておきたい物がないか相続人全員で確認しましょう。
細かいスケジュールを立てる必要はありませんが、全員が集まれる日やいつまでに終われせるかを明確にしておくことは重要です。また、想定外のことが起こり得るため予備日なども考慮し、余裕を持って日程を調整しておくようにしましょう。
予定を明確化しておきたい事項は下記の通りです。
・整理日と作業の期限
・整理する品物や部屋の順番
・ゴミの収集日
・ゴミの持ち込み場所(自治体のゴミセンター)と営業時間
・処分にかかる費用の見込み
仕分けた後にすぐ処分できるわけではないため、処分する品物を置くスペースの確保が必要です。明らかに処分する物は家の外に置いていても問題ありませんが、それ以外は家の中で保管しなければならないため置き場所専用の部屋を決めるなど、前もってスペースを準備しておくとスムーズに整理が進みます。
写真や日記、ビデオなど故人の思い出が詰まった品はなかなか処分しにくいと思います。無理に処分せず気持ちが落ち着いてから少しずつ進めると良いでしょう。写真に撮ってデータで保管したり、段ボール箱一つ分に収まるようにして手元に残したり、それぞれの思う方法で整理するのが一番です。
親が亡くなった後で実家が空き家になってしまう場合は、遺品整理を進める前に家をどうするか決める必要があります。
実家が空き家になれば相続人が管理を行わなければなりません。売却もしくはいずれ実家に戻る場合でも、建物が良好な状態を維持するためには丁寧な管理が望まれます。月に一度程度は換気や掃除をし、庭の手入れや雨漏り・カビの確認、郵便物の整理などのために実家に通うことが理想です。遠方で自分で管理するのが困難であれば近くに住む知人、親戚もしくは空家管理サービスを請け負っている業者に依頼するなどの措置が必要です。
不動産の名義が故人の場合は売却前に相続登記(不動産の名義変更手続き)を行わなければなりません。相続登記には2~3カ月を要するため、売却を検討している場合は早めに手続きしておきましょう。
不動産会社、もしくは遺品整理の専門業者でも不動産売却を請け負っているところがありますので、ご遺族様にとって最適な業者・方法を選定するようにしてください。
家も丈夫で便利な場所であれば賃貸として貸し出すことも考慮してはいかがでしょうか。また、リフォームをしてゲストハウスにしたり、一旦更地にしてから駐車場にしたり、さまざまなオプションも考えられます。不動産会社や活用方法に関する提案やサービスを請け負っている遺品整理の専門業者などに相談してみましょう。
身体的に辛い場合や遺品整理をする時間がなかなか取れないという方は、遺品整理の専門業者に依頼することをおすすめします。
遺品整理業者は遺品の仕分けや不用品の引き取り、部屋の清掃を請け負ってくれます。荷物の整理だけではなく行政や各機関への手続きの代行など遺品整理に必要なほとんどの作業を行ってくれるため、人手や時間が不足している場合は依頼を検討してみると良いでしょう。遺品整理を専門にしているため遺族の気持ちに寄り添いながら丁寧に遺品を仕分けて整理してくれます。また、貴重品の捜索や、パソコンやスマートフォンなどのデジタル遺品に関するトラブルにも精通しており、個々の要望や相談に応じてサポートしてもらえます。
業者の中にはオプションサービスとして遺品整理を行っている会社も存在するため、依頼する際は必ず以下の点を確認して信頼できる業者かどうかを見極めましょう。
・遺品整理サービスを専門に提供している業者である
・料金設定が明確である
・遺品整理士などの有資格者が在籍している
・代表者やスタッフがホームページで紹介されている
・遺品の供養、ハウスクリーニング、リフォーム、不動産の売却・活用などのアフターサービスが充実している
特にホームページに参考価格が掲載されていない場合は不安が増すと思います。利用者の声や感想にもよく目を通しておいたほうが良いでしょう。また、不用品の買取には古物商許可、廃棄物の運搬には一般廃棄物収集運搬許可が必要になるため、それらの許可証を得ていることもきちんと確認しておいてください。
遺品整理をすることは人生のうちでもそう多くはありません。親の死後に実家の整理をどう進めるのか悩んで心配になるのは当然です。遺品整理は相続問題にも関わりトラブルの原因ともなる大変な作業なので、相続人全員が集まって進めるのが理想です。まずはご遺族で話し合いながらスケジュールを立て、当コラムで紹介した遺品整理のコツや手順を参考に悔いの残らない遺品整理を行ってください。