「終活」という言葉を聞いたことはありますでしょうか?
「終活」とは「人生の終わりを考えることで今をよりよく生きる活動」のことです。
人生を充実させる活動として脚光を浴び、2012年に当時の流行語にも選ばれました。
ただ、言葉を聞いたことはあっても「何のためにするのか、何をすればいいのかは知らない」という方は多いのではないでしょうか?終活の目的や行うべきことを知れば、恐れてしまいがちな「死」を前向きに捉え、残りの人生を充実したものに変えることができます。
今回はそんな「終活」の全容を紐解いていきましょう!
終活の目的は「人生の終わりを意識し今を充実して生きること」です。
死は誰にでも必ず訪れるもので、それがいつ・どこでそうなるのかは誰にも分かりません。ただ、死の直前になり「もっとあのようにするべきだった」「まだやり残したことがあった」などのように後悔したくはないですよね。
だからこそ自分なりの生き方を設計し、できることから一つずつ準備・実践していくことが大切になってきます。
また、終活を行う目的で多いのは「突然自分が亡くなったときに家族を困らせないようにすること」です。実際に「家族に迷惑を掛けないようにするため」や「病気や介護が必要になったときに備える」という意見は多いです。共に人生を過ごされる周囲の方々のことも考えながら設計することで、終活の目的をより鮮明にイメージしやすくなるかもしれません。
では終活をすることで、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか?
主なメリットは3つあります。
終活をする最大のメリットは、残されたご家族への負担を軽くできることです。
ご自身が亡くなられた際「お葬式やお墓をどうするか」「私物の処分はどのように行うのか」などやるべきことは山積みです。また、死亡届の提出など公的・法的な手続きもしなければなりません。いずれも煩雑な作業なため、ご家族がゆっくり故人との思い出や悲しみに浸る余裕はありません。また、扶養していたお子様や配偶者の今後を考えておらず、金銭的に困窮する恐れもあります。
このような理由から、所有物を手放したり、貴重品の保管場所を整理整頓するといった身辺整理を生きているうちに全て済ませておくことで、ご家族への負担を軽減することができます。
ご遺族同士で故人の遺品整理をする上で最も多発するのが「遺産相続のトラブル」です。
故人の残された財産をめぐり、仲の良かったご遺族が法廷で争うという事案が近年増加しています。自身の死がきっかけでこうしたトラブルが起こるのは悲しいことですし、できるだけ避けたいものです。
終活では「遺言書」という法的な書類を作成し、自身の遺産をどのように相続したいかを明確にしておくことで、遺産相続のトラブルを未然に防ぐことができます。遺言書は形式が決まっているため、書き損じを減らすためにも、所有している財産や土地を洗い出してから作成するのがおすすめです。
終活は、自分自身の人生を見つめなおし、これから先の人生をどう生きていきたいかを鮮明にイメージできるきっかけになります。
普段何気なく生きていると残された人生に対して漠然とした不安を感じることがありますが、具体的に何をするのか真剣に考える方は少ないです。例えば、突然大病を患った時にどうしたいか、老後の過ごし方・必要な資金、人生で後悔していることなど、世代や環境によって様々です。そうした不安をノートに書き出すことで、ご自身の悩みや今後の方向性が明確になり、安心して余生を充実させる準備をすることが可能となります。
終活は、普段深く考えないようなご自身の「死」や死後の状況について真剣に向き合う活動になるため、強烈な不安や孤独感に襲われてしまう方もいらっしゃいます。
できれば想像したくないことをあえて考えるというのは、それなりにストレスのかかることです。
また終活では、ご自身が所有している財産や収支に関する情報を整理するため理想のライフプランに対する金銭的余裕が無いことに絶望されることもあります。
現在のお金の使い方を見直すきっかけになりますが、もしお一人で不安になるようでしたら、ご家族や終活アドバイザーへの相談を通してネガティブな気持ちを払拭しましょう。人に相談したり、気持ちが落ち着くことで、理想のライフプラン実現に近づくためのアイデアを生み出すことができます。
近年、終活される方を狙った詐欺が増加しております。生前に納得して契約したはずのお葬式なのに、契約内容と実際のお葬式の内容が全く異なる、保有資産を不当な金額で買取するなど、その手口は実に巧妙です。
他にも終活キャンペーンなどと謳い、お墓や貴金属を売りつけるような手法もあります。費用の一部を隠して安く提示していることもありますので、契約前に必ず合計金額を精査したり、ご家族など第三者にも確認してもらうことで予防しましょう。
身辺整理に相続や遺言に関するトラブルはつきものです。それを未然に防ぐのが遺言書です。これを「今はまだその時期じゃないから書かない」と先延ばしにされる方がいらっしゃいますが、それは危険です。
遺言を残さぬまま亡くなられ、残されたご家族が財産の取り分をめぐり裁判で争う恐れがあるからです。
遺言書は法的な効力をもち、書き方も統一されているため、相続が必要な場合は必ず作成しましょう。
エンディングノートは、いわば「終活のメモ帳」です。
法的な力はありませんが、ここに終活で取り決めたことや個人情報を書き留めることで、ご遺族を安心させ、ご自身も人生を考え余裕をもって終末期を迎えることができるのです。エンディングノートの書き方には決まった形式が無いため、紙製のノートやパソコンのドキュメントファイルなど、ご自身の書きやすい方法で自由に記入してみましょう。
エンディングノートには、以下の情報をなるべく具体的に記載しておきましょう。
・個人情報:生年月日、住所、血液型、趣味、人柄、宗派、ペットのことなど
・葬祭関係:葬儀の進め方、理想のお墓、希望の遺影、遺言
こちらの作業は必ず生前に行うようにしましょう。もし不用品を一切整理をせず亡くなられた場合、ご遺族の方々がゆっくり悲しみに暮れる暇もなく全て行うことになります。不用品の整理はなるべくご自身がご遺族の方々と一緒に行うようにしましょう。基本的なやり方は、今後の人生に本当に必要な物かどうかを基準に仕分け、不要な物を手放すだけです。必要な物で囲まれることで、より充実した人生を送ることができます。
また不用品の中から、ご自身で把握されていなかった遺品が見つかり、物によってはご遺族間の揉め事に発展する可能性があります。
その際エンディングノートに財産目録を作成し、誰に何をどれくらい所有してもらうのかを明記しておくのもおすすめです。
個人情報には、先ほど述べた「生年月日」「住所」「血液型」のほかに「金融情報」があります。
銀行口座、クレジットカード情報、生命保険、株やFXの取引情報など、金融資産にまつわる情報は全てリストアップすることで、遺産をご遺族に確実に譲渡し、第三者への漏洩を防ぐことができます。
スマートフォンやパソコンなどの精密機器に保存した個人情報も、全て整理しましょう。電話帳や住所録のアプリ、メッセージの受信・送信ボックスの整理はもちろん、SNSや登録している各種サービスなども、不要なものは退会すると良いでしょう。
終活には「このタイミングで始めてください」といった明確なルールはありません。
したがって、いつから始めても構いませんが、「なるべく早めに」あるいは「思い立ったとき」に始めるとよいでしょう。
いつ死ぬか分からないという点でも、終活に興味を持ち始めた、比較的モチベーションの高いタイミングで行ってみましょう。
・定年を迎えたとき(親、または自分)
・親に終活を勧めたいと考えたとき
・身近な人が亡くなったとき
・健康面で不安を感じたとき
・相続のことを意識し始めたとき
など、人生の節目となるタイミングで終活を始める方も多いため、こちらもひとつの目安として参考にしてみてください。
終活は、ご自身の残りの人生を充実させるだけでなく、ご遺族の今後の人生を明るくするためのハウツーです。
「人生の終焉に向けた準備」や「死を意識するもの」としてネガティブな印象を抱きがちですが、今をよりよく生きることにつながる前向きな活動であることが当記事でご理解いただければ幸いです。
ぜひ、身辺整理をして今までの人生を振り返り、より実りのある余生をお過ごしください。