「断捨離」「ミニマリスト」といった言葉が頻繁に聞かれるようになり、物を持ち過ぎないシンプルで洗練された暮らし方が注目されるようになってきました。
実は多くの物に囲まれていると、人は時間的にも気持ち的にも余裕がなくなり、振り回されてしまうのです。
これまでの暮らし方を「断捨離」でリセットして、もっと自分らしく生き生きと過ごすために「生前整理」を始めましょう。
「断捨離」はヨガの思想である「断行(だんぎょう)」・「捨行(しゃぎょう)」・「離行(りぎょう)」を基に、作家のやましたひでこさんが提唱した片付け理論です。
・断 …… 入ってくる不要な物を断つ
・捨 …… 不要な物を捨てる
・離 …… 物への執着から離れる
という意味になります。
つまり「断捨離」とは、無闇に物を増やさず、不要な物は捨て、そして物に執着する心を手放して身軽に、快適に生きようという考え方です。
断捨離を行うことのメリットはたくさんあります。
もちろん「部屋が片付く」「スペースが広くなる」といったことは容易に想像がつくと思いますが、ここではもっと大きな嬉しいメリット5つをご紹介します。
2014年にライターのメーカーとして有名なZippo Manufacturing Companyが行った「失くし物」に関するオンライン調査の結果、日本人は1カ月当たり平均76分、一生の中では平均75,322分間、つまり52日分以上もの時間を、失くし物を探すことに使っていたことが分かりました。
〈日本人の失くし物TOP10〉
1.ペン
2.現金
3.財布・小銭入れ
4.書籍、ノート
5.ライター
6.自転車
7.衣類
8.車の鍵
9.宝飾品
10.携帯電話.
ランキングの中で『自転車』は盗難の可能性も高いですが、その他は「自分で失くしてしまったことがある」という人が多いのではないでしょうか。また「家の中(職場など)にはあるはずだけれど、どこにあるか分からない、見つからない」というケースもあるでしょう。
身の回りに物が多ければ多いほど見失いやすく、探すのにも時間がかかってしまいます。断捨離をして整理整頓できれば、このような手間と時間の無駄を減らすことができます。
先程の【時間的な余裕が生まれる】の項目と繋がるところもありますが、探し物が見つからないと、持っている物なのに新しく購入してしまうなど無駄な出費が増えてきます。実際に片付けをしたらホッチキスやハサミなどの日用品がたくさん見つかることがあります。
断捨離をして持ち物が減り、綺麗な状態になれば、その状態を保ちたいという心理が働きます。すると無駄な買い物や収集グセを抑制しやすくなり、節約に繋がります。
また、自分にとっては不要でもまだ使えるものならリサイクルショップに買い取ってもらったり、フリマアプリなどを利用したりして売却することもできます。意外な品物が高価で売れたりと臨時収入になることもあるでしょう。
当然のことながら、物が溢れていると掃除がしにくくなります。物を退かしたり戻したりと手間や労力がかかると次第に億劫になってきて掃除をする頻度が落ちていくものです。
汚れていることが当たり前になってしまうとホコリやダニが増え、アレルギーを発症したり、免疫力が低下して病気にかかりやすくなります。
断捨離をして綺麗に片付いた状態なら少しの時間と手間で掃除できるので、清潔な状態を保ちやすくなります。
物が溢れた部屋では転倒や怪我をしやすくなります。誤って何かを踏んでしまったり、少しの揺れで物が落下してくる可能性もあります。地震の際には積み上がった荷物が崩れて下敷きになってしまうかもしれません。
断捨離をして必要な物だけで綺麗に整理された部屋になれば、地震などの災害対策も取りやすくなり安全性が高くなります。
断捨離は自分自身と向き合う作業でもあります。自分にとって「必要な物」と「不要な物」、「大切な物」と「そうではない物」を改めて知ることができます。
また、物に溢れた空間は自分で感じる以上にストレスになります。無駄に探し物に時間を取られ、見つからずにイライラし、気持ちを振り回されてきた生活が、断捨離を行うことで解放され自分の軸で生きられるようになります。
心のゆとりは生活の満足度を上げ、対人関係や日常でも余裕を持って過ごせるようになるでしょう。
「やる」と決めたらいきなり大掛かりな片付けを始める人もいますが、コツを知らないまま始めてしまうと途中で挫折したり、リバウンドしてまた物で溢れてしまうこともあります。ここでは断捨離を成功させ、綺麗をずっと保って行けるようにコツを4つお伝えします。
まずは簡単にできて達成感を感じられるように鞄の中、財布などの小さな範囲から始めてみましょう。
〈例〉
鞄の中 …… レシートやティッシュくず、ずっと前にもらった飴など不要な物が入っていませんか?必要な物は場所を決めて整理しましょう。
財布 …… レシートやポイントカードでぱんぱんになっていませんか?レシートは必要なのであれば、家に帰ったら出してレシートだけをまとめて保管する場所を作りましょう。ポイントカードはよく使うもの以外は捨てる、またはカードケースにまとめるなどしましょう。
化粧品ポーチ …… 次から次へと新製品や新色が発売され、シーズン毎に買ってしまいがちな化粧品ですが、実はその使用期限は一般的に『未開封で約3年間』、『開封済みなら約半年以内に使い切る』ことが推奨されています。期限を過ぎたものを使用することは肌トラブルにも繋がりますので、潔く捨てましょう。
カテゴリー毎に分けて断捨離することで「手放す」「残す」の判断がしやすくなります。「玄関」「台所」「洗面所」などは置いてある物が同じカテゴリーでまとまっているので取り組みやすいでしょう。
〈例〉
玄関 …… 下駄箱の中でずっと履いていない靴はありませんか?色褪せていたり、湿気でカビが生えているようなことも。高かった革靴なども経年劣化で靴底のゴムが傷み、冠婚葬祭の時に履いてみたらボロボロに崩れるなんてことも意外とよくあります。思い切って捨てる、もしくはメンテナンスに出す、など整理しましょう。
台所 …… 使っていないまま賞味期限が切れた調味料や何年も前から冷凍庫に眠っている食品はありませんか?頂き物で使っていない食器や調理器具などは思い切ってリサイクルショップに引き取ってもらう、またはフリマアプリで売るなどしましょう。
収納スペースの大きさと自分が管理できる数、またライフスタイルに合わせて手元に置いておく量や個数を予め決めておきましょう。
例えば「一人暮らしなのに4人分の食器がある」などは多すぎかもしれません。頻繁にお客様を招いて食事をするような場合を除いて、手放したほうが良いでしょう。
衣類などは洗濯の頻度に合わせて数を決めるのがおすすめです。毎日洗濯するのであれば最少で2日分あれば事足りますが、1週間に1度しか洗濯をしないのであれば7~8日分は最低でも必要になります。
事前に量や個数を決めておくことで、断捨離のときに「手放す」「残す」の判断がしやすく、後悔も起こりにくくなります。
人からプレゼントされた、幼少期に作った、などの思い出の詰まった物や写真、動画は、ついつい思い出に浸ってしまい時間がかかってしまいます。とくに「断捨離」の進め方に慣れていない初期でこれらを整理しようとすると時間がかかる上に選択しきれない場合が多いので、最後に手を付けるようにしましょう。
最終的に家の中を丸ごと断捨離するにしても、上記の4つのコツを踏まえて、何回かに分けて整理を進めていきましょう。
効率の良い断捨離の進め方・リバウンドしにくい片付け方を4つご紹介いたします。ぜひ参考にしてみてください。
断捨離を進めるにあたって、物を「必要な物」「不要な物」「保留する物」の3種類に分類していきましょう。段ボール箱などを3つ用意して分けていくとスムーズに進められます。
ここで大切なのは「保留する物」を用意することです。残すか処分するかを決められない場合は、無理に決めずに保留にしておきましょう。どうするか迷っている時間を節約して断捨離を進めることができますし、思い切って捨ててしまった後で後悔することを防げます。保留した物については1~2カ月経ってからもう一度手に取って、その間に使うことはあったか、気持ちが変わっていないか、などを確認してみましょう。
「必要な物」の中でとくに使用頻度が高い物はすぐに取り出せるところに収納しましょう。取り出しやすさを考えて収納することで、必要なときに手間取らずに出し入れできます。
逆に使用頻度の低い物を手前に収納してしまうと、そのとき必要な物が取り出しにくく、片付けにくいため、出しっぱなしをしてしまう原因にもなります。
使用するときにセットで使う物はまとめて収納しておきましょう。「掃除道具」や「アイロンとアイロン台」など、まとめておけば使うときに探す手間も省けます。
使いやすさを考えて整理することで無駄な時間を減らし、イライラなどの気持ち的な負担も減らすことができます。
「必要のない物」はまとめて「捨てる」、必要としてくれる人に「譲る」、もしくは「売る」ようにしましょう。
リサイクルショップに売るよりもフリマアプリを使用したほうが高値が付く場合がありますが、売れるまでに時間がかかったり、配送手続きをしたりといった手間はかかります。「断捨離」の「執着を手放す」という思想から考えると、まとめて捨てるか、リサイクルショップに引き取ってもらうのが良いかもしれません。
「生前整理」とは、元気なあいだに自分の財産や持ち物を整理しておくことをいいます。
自分の死後、残された遺族が相続問題や物の処分に困らないように、また自分の人生を振り返り、自身を見つめ直し、本当に大切なものを見極めて、これからの人生をより有意義に過ごすために再設計するための行いでもあります。
生前整理には「断捨離」も含まれます。時間もかかりますし、体力や判断力・気力も必要になってきます。
「断捨離」に取り組むこのタイミングは生前整理を始めるのに最適といえるのです。
自分のこれからのため、大切な人たちのために「生前整理」を始めましょう。
いかがでしたでしょうか。
今回のコラムでは難しいと思われがちな「断捨離」のコツや、具体的なやり方をお伝えしてきました。もし「これならできそう」という思いが湧いてきたのであれば、早速「断捨離」に取り組みましょう。
そして自分のこれからの人生をもっと有意義に過ごすため、大切な人たちの負担を減らすためにも「生前整理」を始めましょう。