「老前整理なんて自分にはまだ関係ない」と思っている40代・50代の方は相当数いらっしゃるかと思います。しかし、年齢を重ねるごとに病気などで自分の体力と向き合う機会が増えると、「自分がいなくなったら家族はどうなるだろうか」と将来のことを考えて、不安にも大きく向き合わざるを得なくなります。
老前整理とは歳をとる前に物や人間関係などを整理することですが、少しでも家族の負担を減らせるよう身の回りの整理を始めることはご自身の余生を充実させるうえでも非常に大切です。今回は、充実した老前整理を行うためのやり方やポイントについて紹介します。
老前整理とは歳を重ねて体力が衰える前に、物や人間関係を整理することです。生前整理が「家族」のためなら、老前整理は「自分」のために行う意味合いがあります。60代、70代とこの先も生活が続くことを見越して、少しずつ衰えていく自分の身体や健康のことを考えながら本当に必要な物だけに囲まれて老後の生活を整えていくことです。
*生前整理の詳細を知りたい方はこちらもご覧ください。生前整理の必要性や方法について分かりやすくまとめています。
また、最近は「ミニマリスト」と言って必要最低限の物だけを所有して暮らす生活スタイルが見直されています。早い人では30代で老前整理や身の回りを整理し始めており、自身の生き方を整えている人も増えています。
早めに始めている人がいると分かっていても、きっかけがないとなかなか手が付けられないものです。では、どのようなきっかけで行うといいのでしょうか。一例として挙げてみます。
・子供が経済的に独立したとき
・病気になったとき
・将来的に不安を感じたとき
上記のように、日々の生活に変化が生じたり感じたりしたときに老前整理を行う人が多いようです。将来への不安を感じた場合に少しずつでも手をつけていくと、不安を払拭できるのではないでしょうか。
退職はそれまでの生活を一変させる出来事です。人生で大きなウエイトを占めていた仕事を引退すれば自由な時間が増えて夫婦で過ごす時間も多くなり、様々な面で変化が生じます。
自由な時間に少しずつ整理を始めていくと本当に必要な物が明らかになり、セカンドライフを充実して過ごせるのではないでしょうか。
年齢を重ねるごとに体力も筋力も低下して体の自由が利かなくなってくるため、元気な40代・50代のうちに整理を始めるのと60歳を過ぎてから取り掛かるのとでは身体にかかる負担が違います。
特に一人暮らしの方は60代・70代から整理を始めてしまうと重い物を運ぶのも容易ではなくなるため、心身ともに健康な若いうちに大変な作業から積極的に整理を進めていくことをおすすめします。
しかし、40代・50代といえば子育てや仕事に一番精力的な世代で、老前整理やセカンドライフと言われてもなかなか実感は湧かないはずです。実際に取り掛かっている方は、子どもの成人や自身が病気になったとき、知人との間で相続の話がでたときなどを機に考え始めたようです。老前整理を始めるきっかけの一例としてこれらの出来事を心にとどめておくと良いかもしれません
老前整理を行うと持ち物を把握できるため、無駄な出費を抑える効果もあります。例えば、服を大量に持っている方の場合、自分の持っている服と似たものを買ってしまうことは予算面だけではなく、その服を置く場所の無駄になります。その積み重ねが無駄な出費に繋がり、またその行いを積み重ねれば大きな損失になります。将来退職してからのことを考えると、お金はできるだけ貯蓄しておきたいもの。老前整理はそれを考えられる良い機会となるでしょう。
歳をとると家の中の何もないところでつまずいたり、転倒して怪我をしたりするリスクが増えます。整理をしておくと地震や火災の場合も家具の転倒回避や避難ルートの確保に効果があり、家の中で安全や安心を手にすることができます。
必要最低限な物に囲まれた生活を送ることで、ご自身が亡くなった後の整理に費やす時間が緩和されます。残される家族のことを考えて、身の回りを整理しておくことは重要なのです。
老前整理を効率良く進めるためのポイントを説明します。
老前整理では必要な物と不用な物ではなく、「使う物」と「使わない物」に分類します。
使わない物は処分して、使う物は下記の2種類に分けます。
・現在使っている物・・・手元に残す
・将来使うかもしれない物・・・処分する
「使うかもしれない」と曖昧なままでは整理は進みませんので、特定の日に必ず使う物以外は処分しましょう。
不要な大型家具や電気製品などから整理していくと、家の広さに改めて気づかされることがあります。これまで目の前にあった物を処分すると整理を始めた実感が湧き、老前整理に対する意識が大きく変わります。
前章でも述べましたが、歳を重ねてから大きな物を処分し始めると子どもや親族、業者に依頼しなければならない状態になることも考えられます。できるだけ40代・50代の元気なうちに処分しておきましょう。
老前整理では「まだ使えるのにもったいない」という考えは捨ててしまいましょう。気持ちは分かりますが、迷っているということは必要ではないということです。残した物で代用できる物もあるかもしれませんし、本当に必要になればまた購入するくらいの気持ちで取り組むと進めやすいです。また、捨てることに抵抗がある場合は、必要としている人に譲ったり、リサイクルショップなどで引き取ってもらったりする選択肢もあります。思い出がある物は特に、そうした手段で片付けていきましょう。
・完璧を目指さない
頭の中で思い描いた通りに処分しようとすると、少しの障害で整理に挫折してしまうことがあります。コツコツと気楽に整理していけば大丈夫です。
・どうしても捨てられない物は期限を決めておく
写真や手紙など処分に迷う物は「いつまでに捨てる」と期限を設けておくようにしましょう。
・整理する場所を決めて期限を設けておく
「寝室の整理は今週中に終わらせる」というように実現可能な目標を設定しておけば間延びも回避できます。目標を持って取り組むことが成功には欠かせません。
整理するのはあくまでも「自分の物」だけにしましょう。すでに独立した子どもの所有物や配偶者の物を勝手に処分してしまうと喧嘩や言い争いなどのトラブルの原因となります。処分したい場合は、家族の了承を得ることが先決です。
地震の際に落下物によって怪我をしたり、避難ルートが妨害されたりする恐れがあるため、家の中の高いところに物を置くのは避けるように注意してください。火を使っていれば引火による火災が発生し、食器棚やタンスなどの大型家具が転倒するケースもあります。火事や災害を想定して物を置くようにしましょう。
老前整理を一日で終わらせようとすると、身体に負担がかなり大きくかかると思います。もし終わらなかった場合は中途半端な状態のまま部屋が片付かず、モチベーションの低下にもつながりかねません。特に40代・50代の子育て・仕事の現役世代は老前整理を始めようとするきっかけを掴みにくいため、このような状況に陥らないためにも初めからスケジュールを組み立てておくことがおすすめです。「今週はリビングの整理をする」というように取り掛かる場所と期限を決めてから整理を始めると進めやすくなります。
老前整理では大量の不用品が発生することがあります。
普通ゴミで処分できる物は問題ありませんが、品種も大きさも異なる雑多な不用品はできるだけまとめて処分したほうが身体的な負担も少なく、手間もかかりません。
なかなか思うように進められない場合は遺品整理を専門とする業者に相談・依頼するのも良い方法ですので、ご自身の考えや時間、予算などに応じて無理のないように整理・処分を進めてください。
最も一般的なのは自治体による粗大ゴミの回収です。申込み方法も簡単で、お住まいの市区町村に問い合わせるだけです。不用品一点に対して回収費用がかかりますが比較的安価ですし、指定された場所と日時に不用品を置いておけば回収してもらえるので非常に利用しやすいです。しかし、タンスや学習机のような大型品も集積所まで搬出しなければならないため、マンションの上層階や自宅の2階から運ぶような場合には怪我や破損などに注意する必要があります。
家電製品四品目(冷蔵庫・冷凍庫、テレビ、エアコン、洗濯機・衣類乾燥機)とパソコンはリサイクルが義務付けられているため自治体では回収してもらえません。購入したお店や近所の家電ショップに引き取りを依頼できます。お住まいの市区町村でも処分方法を詳しく教えてもらえますので、問い合わせるかホームページで確認しましょう。
不用品回収業者に依頼すれば品物の分別が不要で、種類や量を問わず一括回収してくれます。不用品の搬出も業者が請け負ってくれるため、人手不足や大型品の搬出を心配する必要もありません。即日回収にも対応している業者も多く、依頼者側の希望日時に合わせて作業をしてもらえるため整理スケジュールに沿って依頼でき、速やかな整理を行ううえで大きなメリットとなります。
処分量が多い場合や、自力でリサイクルセンターへの持ち込みができず整理に支障をきたす場合は業者を利用するのがおすすめです。
老前整理を始めようとしても整理の判断が付かない、重い物や量が多くてなかなか思うように進められない、という方もいらっしゃるでしょう。そのような方は、遺品整理を専門としている業者に相談して依頼を考えてみてはいかがでしょうか。依頼者の意向に沿って残す物と処分する物に仕分けて搬出・回収をしてくれますし、何よりも的確なアドバイスをしてもらえることは非常に心強いものです。思い出の詰まった物を処分するには覚悟が必要ですし、心痛な思いになります。独りや夫婦で整理していると、思い出や記憶が作業の手を止めることがあります。スタッフに思い出話をしながら整理を行うと、気持ちの面での整理も大きく進みます。遺品整理業者はそのような依頼者の思いに寄り添いながら整理を手伝ってくれますので、老前整理で悩みを抱えている方や困っている場合は専門業者に頼ることも考えてみると良いでしょう。
老前整理とは、残される家族のことを考えるたけではなく、自分のことを考えて40代・50代の元気なうちに不要な物や人間関係を整理することです。体力の衰える60代・70代ではタンスのように大きくて重たい品物の搬出が思うようにできなくなるため、できるだけ早い段階で整理を始めることをおすすめします。若いうちに自分の意思で取り掛かれば、老後は気持ちの面でも落ち着けるはずです。整理とは人生を整えること。皆さんも老前整理の重要性、若いうちから始めることの優位性について考え、ぜひ実践してみてください。